素人の銃捌き (表)
何度も言うようだが僕、斎藤武は無能力者だ。
しかし今何故かその事実が疑われている、というかもはや意味のわからない憶測まで飛び交っている
原因は御察しの通り、先の一戦だ
偶然に偶然が重なり、体調でも悪かったのか倒れてしまった相手を僕が倒したことになっているのだ
よりにもよってその相手がBランクの能力者で、かなり強い部類の人だったので、その人を僕が完封?してしまい、憶測が飛び交っているのだ
曰く、無能力者ではなくAランク以上の能力の持ち主
曰く、無能力者だが人並外れた反射神経と身体能力を持っている
曰く、能力を隠しており能力を使わずにBランク能力者を倒した
何一つとして正しくない事実がまるで真実であるかのように語られているのだ
(どうすりゃいいんだ…)
一回弁明をしてみたが実力を隠してる説が有力になっただけで意味がなかった
そんなことを考えているとーー
「よ!何悩んでんだ?」
隣の席の春人くんが話しかけてくれた
「いやちょっと、僕の噂についてね」
「おぉ!そういえばお前すごいやつだったんだな、あの「不可視の弾丸」を倒すなんて」
「いやそれは…、いやなんでもない」
下手に弁明しても逆効果だろう、ここは何も言わないでおこう
「そういや今日の5限は射撃練習だけどお前は出るのか?一応能力を使わないんなら任意で出られるって聞いたんだけど」
「いや僕はいいかな……、待てよ?」
「どうした?」
(口で言ってもこの勘違いは鎮まらないだろう、なら本当の初心者の射撃をみんなに見せ続ければ…
「あいつ、本当に初心者みたいじゃないか?」
「あんなずっと初心者の演技なんてできるかな?」
「あいつ本当は…」
みたいな感じになるんじゃないか?)
少しずつ勘違いを解いていくことは可能だろう、そうと決まれば早速!
「僕、やっぱり射撃練習出るよ、先生に言ってくる」
「お!そうか、一緒に頑張ろうぜ」
$ $ $ $ $
先生にはあっさりokをもらえたから、授業に参加することができた
射撃場にきているのだが、とても広く、めちゃくちゃ色々な銃が置いてある
「じゃあ、練習始め!」
先生の合図とともにみんなが一斉に銃を持って練習を始める
どうやら射撃練習は個人練のようだ
さて僕はどうするか…
ふと見ると小さく、反動がなさそうな銃が置いてある
素人目じゃどんな銃かわからないけどここにあるのは、殺傷能力はなくした銃らしいし、弾もゴム弾だ
玉はこれかな?セットしてと…
「よし、撃つか」
「お、あの噂の転校生が撃つらしいぞ」
「銃も使えるのか、と言うかあの銃…」
よしうまいこと注目も集まっているし、ここで素人の銃捌きを見せつければ…!
(僕自身初心者なんだから、的当て感覚で普通に打てばいいはず)
とりあえず何発か連射すれば十分素人だと言うことは伝わるだろう
かなり距離が離れた人型の的に向けて狙いを定める
引き金を持つ手に力を込め、何発か連射する
バン! バン! バン! バン!
(うお!思ったより反動あるし音もでかいな)
と一応人型の的を狙って撃ったんだが外れてるだろうな
的の方を見ていたがそもそもゴム弾で見てなかったからどこに当たったのか外れたのかわからないし、ゴム弾が遠くで散らばっていることぐらいしかわからない
「まぁ、全然ダメだな」
おそらく一発も当たっていなかっただろう
そういえば、さっきまで見ていた人達はどうなったかな?
少しでも勘違いが解ければいいんだけど…
ちらっと、その人達の方を見てみると
「あいつ、やべえな、あの銃であんな芸当をするなんて…」
「銃の扱いもやべえのかよ、Aランクの能力者にも勝てるんじゃねえのか?」
ざわざわ… ざわざわ…
(………………………え?)
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