火の華
それから暫くたったある日、川辺に真っ赤な花が咲いているのを見つけた。
見ていると、何となく相楽が剣で舞っている時を思い出す。
それにしゃんとしていて、
目はギラギラと火のように輝いていた出会った頃の相楽の印象にもよく似ている。
それにしても美しい花だ。
火の花を表すならこんな感じだろう。
この村で過ごした時間は長いが、このような花は初めてだった。
お満は一本摘んで、
「こんお花は凛々しくて相楽様に似ています。」
と言って相楽に手渡した。
相楽は一瞬複雑そうな顔をしてからふっと笑ってお満に問うた。
「お主この花の名をしっているか?」
そう問われると、
いつも自慢げに草花の事を話していたのが恥ずかしくなって、少し俯いてしまう。
「いいえ。ここに長く住んどりますがこんお花は初めてです。」
相楽はそうかと言って、お満の耳の上を通るように受け取った花を髪に挿してくれる。
「そう言えば我の甲冑がこのような赤だったか。
それにしてもこう言った物は女子にこそ合うものだろう。ふむ。少し花が大きいが良く似合う。」
そう言ってするりとお満の頬を優しく撫でたので、元々薄ら赤い頬が真っ赤になってしまった。
恥ずかしくて頬を冷やそうと自分の両手を当てて後ろを向くと。
相楽がくすくすと笑っている。
お満は本当は戦なんてつまらない物に使う甲冑の色のこと等ではなく、
相楽自身がまとう雰囲気の事を伝えたかったが、
口では難しく、上手く伝えられないのが少しばかり残念だった。
それでも相楽が笑ってくれるならば良いかと思う。
でも笑われたのがちょっとだけ悔しくて、速足で軽く逃げてやった。
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