ジャンルを超えて

龍華

ネリネを添えて

ジリリリリリッ

列車の扉が閉まる数分前のベルが鳴る

私はもう行かなければならない

「時間…だね」

『…………はい』

寂しげに笑うあなたを見ていると、このまま手を取って逃げ出したくなる

でも、そんなことをしたらきっともう会えなくなってしまうから…

自分の足が涙で滲んでぼやけ始める

「君と一緒にいられて、僕は幸せだよ」

そんな言葉と共に手を握られる

驚いてあなたの顔を見る

『え…』

こんな、こんな、何も出来ない私なのに…?

「君は、たくさん僕を支えてくれた

気持ちを伝えてくれた

心が少しでも通じ合った

こんなことが、すごく嬉しくて幸せで」

ふっ…と微笑みながら私の涙を拭う

「僕は、君を愛しているんだ

たとえ会えなくても、どんなに離れていても、君のそばにいるよ」

あぁ、私は…

『いいえ、私の方こそあなたと出会えて幸せです

私も…あなたを愛しています

共に、いてください』

2人で顔を見合わせる

お互いしか見えないように

ジリリリリリッ

【―まもなく発車します―

―乗車券をお持ちの方は…―】

時間だ

『あの…これ』

私はネリネが添えられている手紙を手渡す

「!

ありがとう、大切にするよ」

『はい…!』

もう、戻れない

私は列車の中へと足を踏み入れる

「………待って!」

声をかけられ振り向くと、唇に柔らかい感触

理解をした時にはもう、離れていってしまった

プシュー

扉が閉まる

窓から、彼が見える

「ま、た、ね」

あぁ、きっとまた会える

その日を…楽しみに

誰よりも大切な人

列車が発車する

彼は、私が見えなくなるまで手を振ってくれた

私も、そんな彼へ精一杯の笑顔と共に手を振る

列車は様々な想いを届けるため次の駅へと向かった

―また、会える日まで―



[帰らなきゃ 別れを告げる 駅の中

手渡す手紙 ネリネを添えて]

〜語る茶釜作〜

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