第1.3話 大交易時代の貨幣価値

 茶漬帝の治世は啓暦一六〇〇年頃(E.C1600)。大交易時代の真っ最中であり、月国では戦国時代の終わりから江門幕府の成立直前の頃である。

 新大陸で発見されたジャガイモ、カボチャ、チョコレート。イチゴ、トマトが西洋人により「発見」され、船で持ち込まれ始めた時期でもある。

 重要なのは流入がまだ始まったばかりの時期。ということである。現代社会に生きる我々がトマト購入する場合、一袋百円。一ドル、五人民元だとしてこの時代ではまだトマトは苗木で運ばれで栽培が始まったばかりの貴重な品である。だから数が凄く少ない。だからトマト一個が一万円の世界なのだ。

 麦国で百ドル、央華五百人民元の世界になる。つまり現代では満漢全席はコースお一人様一万円から、麦ドルで百ドル、央華五百人民元。

 しかし五百年前の世界では一万ドル。五万人民元。百万円となる。一年は三百六十五日だから三百六十五万ドル。千八百二十五人民元。三億六千五百万円更に一日三食だからこれが三倍になる。まさに天文学的数字である。

 茶漬帝以前の皇帝が輸入品のコーヒー豆でアルパカのミルクでカフェオレを飲んでいていた、という話が残されている。なんでも不老不死の薬であると勧められたそうである。実際それにやはり輸入品の砂糖を入れて飲んでいれば栄養価は高いであるだろうしある程度の高価は期待できただろう。

 それとは逆に茶漬帝は大変質素な食生活だったようである。普段は平素な食事。豪勢な歓待は異国からの客人が来た際程度であったようだ。

 従って現代の我々がごく普通に食する央華料理はこの時代ではまだまだ高級品であり、そんなものを何十皿用意させ、ろくに箸をつけずに捨ててしまうような食生活を皇帝がしていたら瞬く間に財政破綻してしまうだろう。

 逆に一汁一菜であるならばその差は膨大なものとなり、自然と国庫に余力が産まれるのである。

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