第4話 会ってみたい!
「海だぁーーー!」
目の前に広がる大海原に思わず声を上げる。岬のように海側に突き出した崖の上で大声を上げた。
空からすぐに海を見つけたが、やはり地面に降りて見る海はまた違うな。
実はリディアの話を聞いて、バルドーさんと相談した。
色々な町や村を訪問して楽しむのも旅の醍醐味ではあるが、行く先々でトラブルが発生していたらそもそも楽しめなくなる。だから海までフライで向かうことにしたのだ。
決して新鮮な海の幸を早く食べたいからではない!
最初は初めて海を見るジジとピピの為に砂浜のある場所に降りようと思った。しかし、砂浜のある場所は漁をしていたり、塩を採取したり作業をする人がいたので諦めた。そして人の見つからない場所で、感動的な海の対面に相応しい場所を見つけたのがここである。
D研を開いて皆を外に連れ出すと、ジジとピピは驚きで固まってしまった。
「こ、これは、大丈夫なんですか!? 水がこんなに沢山……変な臭いもします!」
ジジの感想を聞いて、初めてならそんな風に感じても不思議ではないと思った。
「す、凄いのぉ~!」
ピピはそれだけ言うとシル達と大騒ぎを始めた。
『いやぁねぇ、騒ぎ過ぎよぉ。私は海を見ると、テンマに殺されそうになった時を思い出して、体がピリピリしちゃうわ!』
ハルは未だにロンダでのダンジョン攻略の事でチクチクと俺を責めてくる。雷魔法でダンジョンの魔物と一緒に痺れさせたて、あやうくハルに止めを刺しそうになったことを根に持っているのだろう。
「俺はこの匂いを嗅ぐと、食欲が……」
リディアはすでに海の幸を思い出したのか涎を垂らしている。
『そういえば、この先の島に勇者と一緒に戦った戦士の一族が住んでなかったかしら?』
おいおい、何年前の話だよ。地形も変わっているのじゃないのか?
「あいつなら数百年以上前に行ったときは生きていたぞ。元々長命な種族であいつは魔力量が多かったから、他より寿命が長かったじゃないか。それでもすぐにでも死にそうな感じだったけどな」
へぇ~、長命な種族が住む島かぁ。
うん? もしかしてこれから行く島のことか?
「目的の島の話か?」
「そうだ!」
おお~。
「どんな種族なんだ?」
「どんな? 見た目はほとんどテンマ達と同じだったな。俺は詳しくは知らない」
『確か耳が人族より長いから、耳長族と言ったわね。確かタケルはダークエルフとか言っていたわよ』
なんですとぉーーー! まさかのダークエルフですかぁ!
ちょっとワイルドな感じでありながら、肌の色が濃く色っぽいヤンキー系のお姉さんがいる、あのダークエロフ……ゲフン、ダークエルフ⁉
自分の読んでいたラノベやゲームでは、そんなキャラ設定だった気がするぅ。
「あいつら俺と同じで生で魚を食べる。生はもう十分に食べたから、俺はジジが料理した食べ物が食いたいぞ!」
なんですとぉーーー! まさか刺身を食べる種族ですか?
気になる話が次々と出てくる。
「そこは意外と遠いのかな?」
「んっ、別に遠くないと思うぞ。俺がドラゴンに戻って飛んで行けば、半日で着くはずだ」
うん、全然問題ない距離だな!
ドラゴンが半日飛ぶというのが想像できないけどね。
『でも、あいつら他の種族との交流はしないじゃなかったかしら?』
「そうなのか? 俺が行くとご馳走してくれたぞ」
『それは、知り合いがいたからでしょ。さすがにもう死んでいるはずよ。だとしたら相手にしてくれないんじゃないかしら?』
「大丈夫じゃないか? 娘がいたはずだから、たぶん俺の事は憶えていると思うぞ」
どっちなんだぁーーー!
いや、どっちだとしても何とか交流を深めたい。
ダメもとで一目だけでもダークエルフを見てみたい!
「な、何事も経験だ。行ってから考えよう!」
「それでは、念のために出発は明日にしませんか?」
バルドーさんの言う通り、もうすぐ暗くなるから明日向かうことにしよう!
その日の夕食は岬の先でバーベキューをすることにした食べることにした。
フライで海面まで下り、海に向かって雷魔法を何回か使う。すぐに魚や魔物が浮き上がってきたので止めを刺して収納した。
バーベキュー用の竈を土魔術で使って作り、その晩は塩を振った魚を焼いて食べた。久しぶりの海の幸をそれなりに堪能した。
最初は海を怖がっていたジジだったが、海に沈む夕日を見て、その壮大さに感動したのか夜になる頃には怖がる雰囲気は無くなり、食事を楽しんでいた。
◇ ◇ ◇ ◇
翌朝は朝からドラ美ちゃんの案内で、ダークエルフの住む島に向かった。ただなんの目印のない海であり、久しぶりのこともあり迷ってしまい、島に着いたのは暗くなり始めた頃だった。
ダークエルフの島はぽつんと一つだけあるのでなく、幾つもの島が固まった群島のようだ。
夜になったので感動の対面は翌日に持ち越すことにした。地図スキルで人の居ない小さな島に降りると、その日は『どこでも自宅』で過ごした。
翌朝朝食をゆっくり食べてから、一人で幾つもある島を確認していく。複数の島に囲まれるように真ん中に少しだけ大きな島があり、その一画に人と思われる集団を見つけた。秘かにリディアに隣の島から確認してもらう。
「間違いない! あれが俺の知っている村の連中のはずだ」
リディアの返事を聞いて、遠目スキルを使って水辺で漁をしている連中を確認する。
あれっ、随分とイメージと違うぞ?
まあ、俺のイメージではセクシーなビキニスタイルの浅黒い肌の女性だから、見えている男性や子供は全く考えていなかったので仕方がない。
それでも予想通り浅黒い肌で、耳はエルフ耳をしている。しかし、どちらかといえば細身をイメージしていたのだが、大人の男性はハッキリ言ってマッチョだ。
漁師なら浅黒い肌にマッチョは変でもないのだけど……。
後は大人の女性ダークエルフに期待しよう。
はやる気持ちが抑えられなくなり、リディアを一時的にルームに入れ、隠密スキルを使って彼らのいる島の連中から見えない位置までフライで移動する。すぐにリディアをルームから出して、彼らに話しかけようとゆっくりと近付いたのであった。
近付きながら改めて様子を見ると、幼い女の子たちが火の番をしている。まだ寒い時期のはずだが、水辺で銛のようなもので魚を獲ろうとしているマッチョたちは上半身裸である。
バルドーさん好みがたくさんいるぅ~!
「お~い、すまないが話をさせてくれ」
リディアは警戒心が全くないのか、普通に子供たちに声を掛ける。
子供たちは俺達を見ると驚いた顔をして、すぐに警戒するように俺達と火を間に挟むような位置に移動している。
「エアルは生きているか? 生きていたらリディアが会いに来たと伝えて欲しい」
相手が警戒しているのを一切気にしないで、リディアは子供たちにさらに近付きながら話しかけた。
「お前達はホレックの連中だな!」
幼女の一人がしっかりとした話し方で、怒りの表情を見せて叫んだ。
「んっ、ホレック? 俺はホレックとは関係ないぞ。エアルの父親であるエクスの知り合いだ。エアルも死んじゃったのか?」
「嘘をつくな! エクス様は二百年程前に亡くなったのよ。エクス様の名前をどこで聞いたか知らないが、そんな嘘が通用すると思っているのか!」
うん、子供とは思えないほど、しっかりした幼女だ。
「う~ん、どう話せばわかるかなぁ?」
リディアは何も考えていない気がするぅ。
ドスッ!
どうするか考えていると、目の前に銛が投げ込まれた。
漁をしていたマッチョ軍団が、こちらに向かって走ってくるのが見える。
バルドーさんに任せた方が、上手くいく気がするぅ~!
臨戦態勢で子供たちを守るように、マッチョたちが我々に対峙したのである。
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