ひとでなしのうた

スズヤ ケイ

たぐるもの

 たぐる たぐる


 するするするり 


 たぐり たぐって


 ひきよせ まねく


 こちらへ おいでと


 まねいて よせる



 あおぞら しらなみ


 ひろがり はてて


 わたしの そばには なにもない



 さびしい こいしい


 こがれて つかれ


 わたしの こころは つやがない




 たぐる たぐる


 ずるずるずるり


 かぜよ あらしよ


 ひきよせ まねけ


 こちらへ すすめと


 ひきずり よこせ



 あまぐも くろなみ


 くすんで われて


 あなたの おふねは うごけない



 うれしい いとしい


 はずんで うかれ


 あなたの からだを はなさない



 たぐり たぐった あみのさき


 ひとよの こいびと からめて つかむ




 いとしい いとしい こよいの あなた



 めくるめくとき あじわって


 ゆっくり じっくり たのしんで




 ほねのずいまで しゃぶって くだく




 そうして むかえる あさは また


 わたしを こどくへ つきおとす




 わびしい むなしい


 くじけて おれて


 わたしの こころは かれてゆく





 わたしは いつまで うたえばいい


 わたしは どれだけ くらえばいい



 みちぬ こころが うまるまで


 ふくれぬ はらが みちるまで





 だから うたう


 さらさらさらり


 うたい ならして


 ひろげて さぐる


 だれか いないか


 さぐって まねく



 のろいの うたを いつまでも


 すくいの かねを どこまでも



 わたしを あいが みたすまで


 わたしの うえが とまるまで



 うたい たぐり まねくでしょう


 ひきよせ むさぼり くらうでしょう





 ああ ああ


 なんて いとおしい


 なんて あさましい




 どうか ゆうしゃよ きたれ


 わたしは ここに


 いまわしき まもの


 そのみは ここに



 みしらぬ あなたが こなければ


 みしらぬ だれかが きえるでしょう



 どうか ゆうしゃに とどけ


 わたしの うたよ


 おぞましき まじょ


 そのなは ここに




 しおさいの よびごえ


 あんしょうの かねのね



 たぐりよせるあみ


 ひびきわたるうた



 ただくらい たおされるために いきるもの



 わたしの なは ■■■■



 ただあいし あいされることを のぞむもの

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