037

「芽生ちゃんはどうして暁ちゃんが結婚してるって知ったの?」


「だって、日下さん会社では結婚指輪はめてるの」


「あら、そうなんだ?」


「会社以外では外してるから、全然気づかなかった。きっと遊び人なんだよ。幻滅だよ」


飲まなきゃやってられないとばかりにピーチフィズをぐいっとイッキ飲みする。甘いお酒のはずなのに何故だか苦く感じられて、私は渋い顔をしてその場に突っ伏した。


もう終電近い時間になって、お客さんもまばらになってきた。店内の心地よいBGMだけが耳を抜けていく。


「……芽生ちゃん、暁ちゃんのこと好き?」


突っ伏したままの私に、ママが優しく問いかける。私はガバッと顔を上げると、ふてくされたように呟いた。


「そりゃ好きですよ。悔しいことに」


私の返事を聞いたママは大きく頷く。


「そっか。じゃあ教えるけど。暁ちゃんの奥様は三年前にお亡くなりになっているのよ」


「……え?」


奥様がお亡くなりに?

どういうこと?


そんなこと、寝耳に水だ。

私は理解できずに目をぱちくりさせた。

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