033

こんなことをして何になるというのだ。知りたいことがあるなら直接本人に聞けばいいのに。

自問自答しながらも、私は衝動が止められなかった。


日下さんは七階建てのマンションへ入っていった。見た目だけでは単身用なのかファミリー用なのかわからず、私は入口の自動ドアからこっそり中を覗き見る。しっかり閉まったのを見計らってから、ゆっくりと中へ入った。


奥にあるエレベーターの階数をすぐさま確認する。すると、一階で止まったままになっていた。


あれ?

動いていない。

どこに行ったんだろう。

一階に住んでいるのかな?


一階の部屋も確認しようと振り向くと日下さんが立っていて、驚きのあまり息が止まった。


「どうしたの?」


「あ、いえ、その。」


「ずっと俺をつけてたみたいだけど、どうして?何か俺に用事だった?」


「いや、えっと、ご、ごめんなさい。日下さんのこと、知りたくて、つい。」


「俺のこと?知りたいの?」


ジリジリと詰め寄られ、それに合わせて後退りをするも、壁を背に行き場をなくした。壁ドン状態で逃げ場がなく、私は身を小さくする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る