030

余韻に浸る中、呼吸を整えていると、だんだんと頭がはっきりとしてくる。


日下さんに聞きたいことは色々ある。

あるのに、結局何も聞けていない。


日下さんの手が私の髪を撫でた。

その柔らかい手つきが心地よくてうっとりとし、私の思考をどんどん鈍らせる。


日下さんと視線が絡むと、ふっと甘く微笑んでくれた。だけどそれはまた会社で見るような寂しそうな笑顔だった。


どうしてそんな風に笑うの?

やっぱり私のエッチは下手だった?

もっと幸せそうに笑ってよ。


言いたくても言えなくて、言葉を飲み込む。体は満たされたのに心は満たされない。


今回日下さんはあの日みたいに泣かなかった。

ベッドの上では情熱的で私を求めてくれるのに、終わった後は寂しそうに笑う。


そこだけは変わらなかった。

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