第150話 再会 9 〜ストレイライザーの試し斬り〜


 ストレイライザーは、メイノーマを目で追い自分が手に持った角材を見た。


 メイノーマは、持って行った試し斬り用の角材を、丁度良い穴に差し込んで立たせたが、ストレイライザーは、1本の薪の所に置かれた角材を手に持ったまま、その様子を見ていた。


 メイノーマは、自分の立てた角材を見てからアジュレンを見た。


 ウサギの亜人のアジュレンは背の低い種族な事もあり、その立てた角材と同じくらいだった。


 メイノーマは、差し込まれた棒の高さとアジュレンを見比べてニヤリと笑ったので、アジュレンは、ムッとして視線をメイノーマから外した。


 その様子を見てメイノーマは、クスクスと笑うと直ぐに頭を小突かれたのでビックリした。


「ダメよ。あなただって、尻尾を触られるのは嫌でしょ。それと一緒よ。だから、やめなさい」


 メイノーマは、ウィルザイアにアジュレンを笑った事を指摘されると食堂で自分の尻尾をウィルザイアに握られた事を思い出し、反省するような表情をした。


「そうよね」


 メイノーマは、一言ポロリと言うと、アジュレンに申し訳なかったというような表情を向けた。


 アジュレンとしてもメイノーマの様子を、視界の隅に捉えていたので、ウィルザイアに言われて申し訳なさそうな表情をしている事は理解できた。


「ま、まあ。……。いや、もう、いいよ」


 仕方なさそうな様子で言うと、アジュレンはジューネスティーンを見てからセルレインを見た。


「それより、どうする? 試し斬りは?」


 セルレインは、メイノーマの悪戯に困った様子で見ていたが、言われて本来の目的に気がつきジューネスティーンを見た。


「試し斬りは、俺がやろう」


 ストレイライザーが、試し斬りの棒を刺した場所に戻ってきた。


「だが、その剣を試す前に、俺の剣で確認しておこう」


 そう言うと、メイノーマが刺した試し斬りの棒の前に立って自分の剣を抜いた。


 その様子を見て、全員が、ストレイライザーの剣の間合いから距離を取るように後ろに下がった。


 ストレイライザーは、全員が自分の周りから離れるのを確認すると、試し斬りの棒に向いて剣を構えた。


 剣を右上段に構えると、そのまま、試し斬りの棒を袈裟斬りにすると、鈍い音と共に斬られた部分が地面に落ちた。


 剣をおさめると確認するように地面に落ちた試し斬りの棒を手に取り、その斬り口と立っている棒を確認した。


「……。やっぱりか」


 ストレイライザーは、剣を収めると試し斬りの棒を見て呟いた。


 ストレイライザーが斬った試し斬りの棒は、三分の二は斬れていたが、残りの三分の一は折れており想定の範囲内のことだったように納得するような表情をした。


「おい、やっぱりって、どう言う事なんだ?」


 セルレインが、気になって聞いた。


 すると、ストレイライザーは、自分の斬った試し斬りの棒を台座から引き抜くとセルレインに放り投げた。


 その試し斬りの棒をセルレインは片手で受け取ると、ストレイライザーは、また、同じサイズの試し斬り用の棒を取ってきて同じ場所に刺してからセルレインの前に行った。


 セルレインは、渡された試し斬りの棒を見て、そして、ストレイライザーを見るが試し斬り用の棒を何で渡されたのか気になっているようだ。


 ストレイライザーは、試し斬り用の棒を持つ手とは反対側の手を見た。


「セルレイン。坊主の剣を貸してもらえないか」


 セルレインは、言われるがまま剣を差し出すと、ストレイライザーは受け取ってジューネスティーンを見た。


「試し斬りは、俺にやらせてくれ。ああ、ちゃんと、引くようにして斬るからな」


 周りは、何を言っているのかという表情をしてストレイライザーの言葉を聞いていたが、ジューネスティーンは、安心したような表情でストレイライザーを見ていた。


「ええ、どうぞ」


 ジューネスティーンは、その言葉もだがストレイライザーの試し斬りを見ていたこともあって、ストレイライザーが、どんな斬り方をするのか理解して安心した様子で返事をした。


 ストレイライザーは、受け取ったジューネスティーンの剣を鞘から抜いて、そのまま掲げるように持つと鞘はセルレインに返すように差し出すのだが、視線は抜いた剣を見ていた。


 セルレインは、されるがまま差し出された鞘を受け取るが、ストレイライザーが何を言いたかったのか理解できないと言うようにストレイライザーを見ていた。


 そんなセルレインの事を気にする事なく、ストレイライザーは、試し斬りの棒の方に歩いて行くと、剣を軽く手首だけで振っていた。


「軽いな。これだけ軽いと持った気がしないな」


 ストレイライザーは重さを確認すると、しのぎ側、刃側、峰側、そして、手首を返して反対のしのぎ側と見ると、刃側を自分に向けてから、少し倒して刃の状態を確認するように見ていた。


(こんなに鋭く尖った刃は初めて見るな。曲剣だから片刃にするって事は小僧も分かっているって事か。歪みも無さそうだし、初めての剣作りなのに、まるでベテラン職人の作る剣のようだ)


「剣の表面も綺麗に研ぎ澄まされている。これなら、俺にも薪の上に置いてあった棒と同じ斬り口が作れるかもしれないな」


 ストレイライザーは、ジューネスティーンの剣を見てニヤリと笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る