転移者とギルド
第17話 ギルドに保護された少年
セルレイン達からギルドに届けられた少年は職員に渡され、医務室に運ばれるとケガなどを確認され、そのままベットに寝かされた。
久しぶりの転移者に、始まりの村のギルド支部のギルドマスターであるエリスリーンが医務室を訪れ、ベットの横の椅子に座り少年の顔を覗くと、少年を連れてきた女性が傍に立って同じように覗き込んでいた。
そして、立っている女性職員に声をかける。
「5年ぶりの転移者ね。メイリルダ」
「はい。ああ、そうなのですか」
ギルド職員のメイリルダ・サイラヲン・プルフィエルは、エリスリーンに応えた。
「前回の、ジェスティエンは、火薬なんてとんでもないものを発明してくれたけど、今回はどうでしょうね」
メイリルダは、エリスリーンの言葉が買い被りすぎると思ったようだ。
「マスター、すべての転移者が、そんな、何でも発明してくれる事はありませんよ。それに、私は、まだ、3年目ですけど、今までの転移者の事なら、マスターの方が、よくわかるんじゃないですか? 今年で何歳になるんですか!」
メイリルダのツッコミを聞いて納得すると、自分の歳を思い出すのだが、直ぐには思い出せず考えるような仕草をした。
「ああ、……。もう直ぐ、350歳? ……。歳の話はどうでもいいわ。まあ、メイリルダの言う通りね。何も無いのも居たわ」
今までの転移者の事を、何人か思い出したのか軽く笑みをこぼした。
「そうよね。最初から、過度な期待はしない方がいいわね」
「そうですよ 何か発明をしてくれたら、儲けものだと思った方がいいですよ」
メイリルダは、呆れたようにエリスリーンに答えた。
(しかし、この娘は、本当に、物おじせずに話すわね。ここで、私に、こんな喋り方をするのは、メイリルダだけだわ)
「ねえ、メイリルダ。これも何かの縁だわ。この子を担当しなさい」
「えっ、私ですか」
「ああ、お前さんもギルドの職員になってから3年目でしょ。そろそろ、転移者の面倒を見てもおかしくはないわ。それに、年齢的に近い方が親近感も湧くでしょ」
エリスリーンに言われて、メイリルダは困った表情をした。
「いえ、私、異世界語なんて話せませんから、無理です」
「大丈夫よ。ここのギルドに、異世界語を、まともに話せる者は居ないわ。それに、異世界語と言っても、すべて同じとは限らないから、あっちの言葉を覚えるんじゃなくて、こっちの言葉を教えるのよ。むしろ、この子の言葉を知らない方が、覚えさせられやすいはずよ」
メイリルダは、半分引き攣った顔をした。
「ああ、それと、言葉は、挨拶から教えて、名詞と動詞に簡単な形容詞から教えていけばいいわ。私に対して物おじせずに話せるなら、メイリルダ、お前が適任なのよ」
「はぁ」
メイリルダは、本当なのかと今の話を上の空のように返事をした。
「じゃあ、よろしく頼むわ」
エリスリーンは、そう言うと椅子から立ち上がりドアの方に移動した。
「はい。えっ! 本当ですか!」
メイリルダは、自分に転移者の面倒を見る事、任された事の重要性に気がつくとエリスリーンに聞き返した。
「本当よ。お前さんが、一番適任なのよ」
エリスリーンは、笑顔をメイリルダに向けると医務室を出て行った。
残された、メイリルダはあわてた。
「えっ! ええーっ! どうしよう」
メイリルダは、医務室の中をウロウロと動き回りだした。
(えーっ! どうしよう。転移者なんて初めてなんだから! 言葉を教えるって、どうやって教えるのよ!)
メイリルダが、ウロウロしていると、医務室のドアが開いた。
「メイリルダ。これ、その子の服です。エリスリーンさんから、渡すように言われました」
そう言って、子供用の服を持ってきた職員は、手に持った服をメイリルダに渡した。
メイリルダは、まだ、自分の考えが纏まらないところに、別の職員から無理やり持っていた服を渡された。
「あ、ありがとう」
メイリルダが返事をすると、その職員は直ぐに部屋を出ていった。
手に持った服を見て、ベットに寝ている少年を見た。
(この子、転移者だったから、何も付けていなかったのよね。……)
メイリルダは、どうしようかと考ながら、少年と持っている服を見比べた。
「裸じゃ、可哀想よね。……」
そう呟くと、メイリルダは顔を赤くした。
「いやいや、この子は、まだ、子供なのよ。寝ている子供に、服を着せるだけよ」
そう言って壁を見た。
「そうよ、まだ、10歳位じゃ無いの、身長だって、1メートル位しかない男の子なんだからぁ。そう、そうよ、弟。この子は弟なのよ。弟の服を着せるだけよ。だから、へ、平気よ。平気」
メイリルダは、少年の枕の傍に服を置くと、掛かっている毛布を足元まで下げて仰向けに寝ている少年を見た。
思わず少年の全身を見て、メイリルダは頬を赤くすると、服の中から下着を取り出し、つま先に下着を履かせ引っ張り上げるように膝の上まで下着を上げた。
そこからは、片膝ごと上に上げるようにして、太ももに通していくのだが、少し恥ずかしいので、顔を爪先の方に背けると手探りで行っていた。
股間の下まで下着を引き上げると、お尻を上げるようにしながら腰の方から下着を上げるのだが、何かに引っかかってしまったように上がらなくなった。
メイリルダは、恐る恐る何に引っかかっているのか見ると、そこには、天井に向かって立っているものが、下着に引っかかって上がっていかない事が分かった。
メイリルダは、その立っているものを見て耳まで赤くした。
(ちょっと、イヤダ。この子立ってる! もう、小さいのに、何でこんな時に立っているのよ)
メイリルダは、仕方なく下着の前を持ち上げて、立っているものを下着の中に入れると後ろも引き上げた。
履かせ終わると、メイリルダは、ため息を吐いた。
すると、今度は体を起こして上の下着を着せた。
一番、肝心な部分を何とかできて、ホッとすると、少年を一旦寝かせてから上着を確認した。
前びらきのシャツと一般的なズボンだった。
シャツのボタンを外し、ズボンのボタンを外して着せる準備をすると、もう一度、少年の上半身を起こしてシャツの腕を通してから、また、寝かせてシャツのボタンを止めていく。
シャツのボタンを止めおわると、ズボンを履かせるのだが、今度は、下着を履かせるよりは簡単に履かせることができた。
履かせた後には、腰のボタンを止めていく。
服を全て着せ終わると、もう一度、毛布を掛ける。
「あーっ、緊張した」
そう言って、ベットの脇の椅子に座ると少年の顔を覗いてみた。
すると、少年の頬が動いたように思えた。
メイリルダ気になった様子で、ジーッと少年の顔を覗き込んでいた。
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