第104話 その2

 千秋はサトウの言葉を無視してスズキに話続ける。


「あなたがキジマに脅されていたのね」


 千秋はサトウにも話すように、2人の前に立つ。


「私は最初、あなた達の不倫をネタにキジマに脅されていると思ったの。でもそれだと説明出来ない事が出てくるの。それで時系列を見直したわ」


千秋は2人の前に手をだし人差し指を1本たてる。


「1週間前、コンペがあった。その時、課長はキジマ達のスパイだった」


次は指を3本にする。


「その3週間前、コンペを課長から指名された。この時はまだスパイではなかった。流す情報がなかったか、必要がなかっただと考えてます」


手を下ろし腕組みをする。


「半年前に私が移動してくる。でもその前から横領はやっていた。この時点で私とキジマと横領は関係無いとわかる。

1年前、課長の接待つまり接待費が増えはじめる。

そして横領そのものはその1年前、つまり2年前から行われていた。

ちなみにキジマ達が名古屋に来たのもその頃ね」


サトウとスズキはいつの間にか寄り添うようになり、互いの手を握っていた。


(あらまあ見せつけてくれちゃって、まるで私が意地悪しているみたいじゃない)


千秋は内心、まるで自分が悪役みたいだなと思ったが、それでもここは躊躇する場合ではないと心を鬼にした。


「横領はもともとスズキさんがやっていたのね。それを課長が知って、途中から課長名義の空接待に変わった。そしてそのカネはキジマ達に渡していたのね」


千秋の言葉にスズキはまた涙を落とす、それを見てサトウは千秋に言い返す。


「そんな訳ないだろう、そんなことはお前の妄想だ」


「調べればわかることですよ」


「誰が調べるというんだ、会社がそこまでする訳ないだろう。そのカネは私がギャンブルに使ったんだ。キジマなんて関係無い」


「課長……」


課長がそう言っても、あなたの腕にしがみつくようにぴったり寄り添うスズキさんの態度が、それを否定していますよ。そう千秋は言いそうになった。


「警察が調べます」


「なに」


「すでにニュースに流れていますが、キジマ達は集団暴行で警察に捕まっています。どうしてそんな事をしたか課長は御存知ですよね」


「うっ」


「私と間違えて女性警察官を襲ったんです。警察は徹底的にキジマ達を調べますよ。当然、課長にも、そしてスズキさんにもね」


千秋はスズキに向かって、努めて無感情に言葉をかけた。


「スズキさん、あなたはキジマ達の集団レイプ事件の被害者ね」

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