第45話 その4
「どこで会うんだ」
「土曜の夜というか夕方から名古屋であるパーティーに出席するというので、私もそこに出て顔合わせして、そのあと正式に契約を交わします」
「パーティーはどこでやるんだ」
「えっとそれは……」
今までの話はもちろん千秋の作り話である。土曜の夜、パーティーに出てその帰り道に襲撃させる計画なのだが、そのパーティーがまだ決まってない。そのことを顔の広い一色に頼んだが、まだみつかっていない。一色も手を尽くしているのだが。
「どうした? 言えないようなパーティーなのか」
「そんな事はありません」
「じゃあ、どこでやるなんというパーティーなんだね」
「それは……」
「チーフ、お借りしたメモはこちらです。すいません借りっぱなしで」
一色が千秋のもとに来てメモを渡す、それには開催場所とパーティー名が書いてあった。どうやら見つかったらしい、ぎりぎり間に合ってホッとする。
千秋が読む前に、課長はよこすように言い、それをみる。
「駅前のあのホテルか。午後6時から10時までやるチャリティーパーティーか」
じーっとメモを見ている、おそらく憶えているのだろう。メモを千秋に返すと、席に戻るように伝える。はやく書き写したいのだろうなと千秋は思った。
自席に戻る途中、一色にウインクしてお礼をいうと、どう返事していいか思いつかない一色は、苦笑いで応えた。
課長はポケットからスマホを出すとメールを打ちはじめる。おそらくキジマに先程の情報を送っているのだろう。
送り終わり、スマホをポケットに戻すと、課長の顔色が変わる。身体中のアチコチをバタバタと触る仕種をしている、どうやら印鑑ケースが無いのに気づいたようだ。
机の引き出しを全部開け、机の上のものを全部ひっくり返す、そしてまた身体中のポケットを探す。
「課長、どうなされたんですか」
「い、いや、なんでもない」
それからまた探しはじめるが見つからないと思案顔になり、やがて千秋を睨んだ。
「佐野君」
「はい」
「私の判子を知らないかね」
「判子ですか? 存じませんが」
千秋は努めて普通に返事をしたのだが、それでもその物言いにカチンときたらしい。怒りの表情で立ち上がり千秋に近寄ってきた。
「佐野君、出したまえ」
「なんの事です」
「とぼけるな、さっき私に触れたとき判子を盗ったろう、出したまえ」
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