第19話 その4

「このコがストーカーしていると思ったわけはナニ?」


「千秋は、今年の正月からウチに入会したよね」


 去年の秋に日本に戻ってきて、自宅に住み、会社に通う毎日が年末まで続いた。

 年末年始の休みで、久しぶりにケイとハジメに会い、ゆっくりと過ごした。その時、ハジメがケイのジムに入会していると聞いて、自分も入ることにしたのだ。


「このコは3週間くらい前に入会したんだけど、さっきの会社を隠した事で気になって、調べてみたんだけどね、出席が千秋の出席した日とほぼ同じなの」


 千秋は記憶をたどってみたが、思い出せなかった。よほど印象に無いコだったのだろうか。


「出席日以外にもジム内の防犯カメラの画像をチェックしたんだけど、このコ毎回髪型と服装変えているの。それではっきりしたわ、目立たないように千秋をけていると」


「私、このコに何かしたかな」


「昔みたいに勝手に思い込まれたんじゃない? 高校時代は[おっかけ]なんて言葉ですんでいるけど、今ならストーカー扱いだもんね」


「うー、思い出したくない過去だなー。って、ちょっと待って、3週間前に入会したって言ったわよね」


「なにか心当たりが」


「その頃の変わったことといえば、今やっているコンペのプレゼン、任命された頃よ」


2人は目を合わせた。


「……ただのストーカーじゃないかも知れないのね」


 その時、千秋のスマホに着信があった。相手をみると、今回の商品の仕入先からだった。どうしたんだろうと思いながら千秋は電話にでる。


「はぁい、どうしたの、何かあったの?」


 相手の話を聞いて、うんうん何回か頷いた後、電話を切り、ため息をついた。


「何かあったの」


「例の仕入先にウチの課長が来たんだって」


「はあ? 何しに? 体調が悪くて帰ったんじゃなかったの?」


「[佐野の上司です、この度はありがとうございます。今後ともよろしくお願いします]って言って名刺置いて帰っていったんだって」


 千秋の言葉を聞いて、蛍はさらに混乱した。コンペを成功させたくなくて足を引っ張っていた筈なのに、千秋をよろしくお願いしますだと。何を考えているのか分からなくなってきた。


 千秋も同様である。2人して頭を抱えて悩んでいるところに、ふたたび着信がある。ノブからだった。


「どうしたのノブ」


「あ、姐さん、さっき例のリンチョウ、姐さんとこの課長、キジマ達と会ってましたよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る