17 手当

「勿論よ・・・。だってキャロルは私の大切な親友だから・・。」


けれど、キャロルが言う。


「テア・・・貴女の顔・・何だかすごく悲し気に見えるわ。」


そして私の右手首にそっと触れるとブラウスの袖をまくった。


「あ・・・!」


キャロルは私の右手首の青黒く染まった痣を見てぽつりと言った。


「凄く・・痛そうだわ・・。」


そしてそっと私の手首を包むこむと言った。


「ヘンリーにやられたのね?」


「そ、それは・・・。」


するとキャロルが言った。


「私からヘンリーに言うわ。テアに酷い事はしないでって。」


「待って!それは駄目っ!」


「え?テア?」


「いいの、キャロル。私の事は・・。気にしないで?ヘンリーには黙っていてくれる?」


「だけど・・。」


すると先生がやって来た。


「どうかしたのかい?」


そして私の右手首に出来ている痣を見つけると眉をひそめた。


「この痣はどうしたんだい?」


「これは・・。」


「外で待っている男性にやられたんです。」


キャロルが答える。


「そうか・・ちょっと見せてくれ。」


先生は私の手首に触れると言った。


「かなり強い力で握りしめられたようだな・・・。」


「あの、先生。この事は・・彼には言わないで貰えますか?悪気は全く無かったんです。」


私は先生にお願いした。


「だが・・・。」


するとキャロルが言った。


「先生、私からもお願いします。彼女がそれを望んでいるので。」


「テア・・・。」


キャロルは分ってくれているのだ。私の事でヘンリーが注意を受けると、私に対するあたりが強くなるのは分っているからだ。


「分ったよ、君達2人の友情に免じて彼には黙っておくが・・治療はしておいた方がいい。」


そして先生は薬品棚の引き出しを空けて布を取り出すと、次に水色の軟膏が入っている瓶を取り出した。へらのようなもので軟膏を塗りつけて上からガーゼを被せると腫れている手首にそっと乗せてくれた。

ひんやりした感触がとても気持ちがいい。


「包帯で巻いて固定するよ。」


先生は手早く、クルクルと包帯を巻いて、包帯止めで固定してくれた。


「はい、これで大丈夫だ。」


「ありがとうございます。」


するとキャロルが言った。


「もう痛くない?テア。」


「ええ、大丈夫よキャロル。それより貴女こそ足の痛みはどう?」


「ええ、痛みは無いけど・・でも歩くときは手を貸してくれる?」


キャロルが手を差し出して来た。


「ええ。勿論よ。」


キャロルは立ち上がると私は彼女の右側に立ち、支えながらゆっくり歩き出した。


「君達、気を付けて帰りなよ。」


先生がドアを開けながら言う。


「はい、分りました。」


「どうもありがとうございました。」


私とキャロルは交互にお礼を言って、医務室を出るとすぐにヘンリーがキャロルの前に進み出て来ると言った。


「キャロル、足の怪我は大丈夫だったかい?」


「ええ、大丈夫だったわ。」


「さっきもテアに言ったんだよ。君のせいでキャロルが・・・。」


「ヘンリー。」


するとそこへキャロルが言う。


「何だい?キャロル。」


「足が痛くて歩けないの・・。運んでくれる?」


そしてキャロルはヘンリーに手を伸ばした。途端にヘンリーが笑みを浮かべる。


「ああ。勿論だよ。」


そしてキャロルの前にしゃがんだ。キャロルが背中にもたれると、ヘンリーはキャロルの膝を抱えると、軽々と立ち上がって歩き出した。


「ありがとう。ヘンリー。」


キャロルはヘンリーに礼を言う。


「いや、キャロルの役に立てて光栄だよ。」


ヘンリーは恥ずかしそうにキャロルに返事をする。


「・・・・。」


歩き始めたヘンリーの後に続いて私は2人から距離を空けて後に続いた。


ヘンリー・・・。貴方は本当にキャロルの事を好きなのね・・・。

キャロル・・貴女はヘンリーの事をどう思っているのかしら?


私は未だにキャロルの本心が分らなくて戸惑いを感じていた―。

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