第8話 ご飯のお代わりは自由ですか?

 治療が終わったのはお昼過ぎ。

 ひと段落ついたところで、「もし、よろしいですかな?」と、50歳後半の男性が私に話しかけてきた。


「はい? まだ、どこか痛みますか?」


 話しかけてきたのは、村長のアルさん。

 腰が痛いと言っていたので、魔法で治した方。


「――いえ。そろそろ昼の時間ですので、よろしければと……」

「本当ですか!?」

「はい。精一杯、用意いたしましたので」

「エリーゼ様は、疲れておいでだ。一度、屋敷に戻り休みたいと思っているのだが……」


 隣に立っていたウルリカが、アルさんに、そんなに気を使わないでいいと言っているけど、逆に用意してくれたものを馳走にならない方が失礼に当たると思う。


「ウルリカ。せっかく用意してくれたのですから、御馳走になりましょう」

「ですが――」


 なんだか渋々な顔をするウルリカ。

 

「大丈夫ですよ」


 私はニコリと笑みを浮かべる。

 そんなに私は量を食べられないので、村の人の食糧事情を圧迫させるような事はないから。

 私とウルリカは村長のアルさんのご自宅に招かれる。

 中央には焚火のようなモノがあって、何だか王都とは家の様式が異なる気が……。


「これは一体……」

「これは囲炉裏というものです」

「囲炉裏……」


 天井から吊るされた大きな針に、手持ちの鍋をかけて目の前で料理を温めるアルさん。

 するといい匂いがしてくる。

 

 ――ぐーっ。


 頑張って診療所を長時間していたので、いつの間にかお腹が空いていたみたい。


「どうぞ」


 木の深皿に入れらてた中身をみると、中にはお城で本を読んだことのある料理が――。


「これって、もしかしてお粥ですか?」

「お粥はお嫌いですかな?」

「――いえ! 初お粥です!」


 私は木のスプーンで、お粥を掬い取って口に運ぶ。

 口に入れると、さまざまな凝縮した旨味を感じる。


「すごくおいしいです! お代わりをくださ……やっぱりいいです……」


 隣に座っていたウルリカが嗜めるような目で見てきたので、そっとお椀を下げる。


「いくらでもありますから、食べていってください」

「本当ですか!?」


 私は、ウルリカの方を見ないようにしてお椀を差し出す。

 見たら貴族の令嬢らしくないと怒られそう。

 たぶん屋敷に戻ったら怒られる。

 もう村長の家に住んでもいいんじゃないのかしら。


 再度、お椀に盛ってもらったお粥を食べる。


「色々と野菜が入ってますね」

「はい。村で取れた野菜をお米という穀物と一緒に料理したものが、こちらのお粥になります。王都からの長旅でお疲れかと思い、ご用意しました」

「お心遣い感謝いたします。それと、昨日から――」

「はい。存じております。私どもは、エリーゼ様を歓迎しておりますので、いつまでも滞在してください」

「ありがとうございます。それでは、今日からよろしくお願いします」


 話も終わり、食事も終わり、馬車に乗ったところで見送りにきていた市長が、近くまで寄ってくると、「最近、近くの村で魔物が出現しているので気を付けてください」と、教えてくれた。





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