王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
第1話 婚約破棄されました。
「エリーゼ・フォン・メレンドルフ公爵令嬢。貴女との婚約を破棄する!」
シュワルツ高等貴族院の卒業パーティ会場は、一瞬静まり返る。
そして……会場の貴族の子弟の視線は、私へと一斉に向けられてきた。
私は、婚約者であるクラウディール王国の第一王位継承権を持つレオン王太子殿下の発言に首を傾げながら、突然の出来事に「なにごと!?」と、思いながら、辺りを見渡す。
誰もが、固唾を呑んでいる。
このあと、どうなってしまうのかと、貴族の方々は心配しているのかも知れない。
それを確認したあと、私は小さく息を吸う。
「えっと……」
それだと、レオン様も困るのでは? と、思いつつ口を開く。
「エリーゼ。君が何を言おうと、婚約を破棄する事実は変わらない! 俺は、真実の恋に目覚めたんだ!」
私の言葉に被せてくるように、レオン様は力強く力説をしています。
そして、私が見ている前で一人の煌びやかなドレスと過剰なまでの装飾をした女性が、私の婚約者であるレオン様の隣に立つと、レオン様の手を――、婚約者が居る目の前で、婚約者がいる殿方の手に触れていた。
それは、貴族の中ではタブーとも呼べるほどのもので……。
その様子を見て、私は内心――、唖然としてしまっていた。
「彼女が、俺を本当の恋に目覚めさせてくれた女性――、アデリナ男爵令嬢だ!」
レオン様の言葉に頬を赤く染めたアデリナ男爵令嬢が「レオン様」と媚びるように寄り添う。
それを、レオン様は満足そうに抱きとめる。
その光景は、まさしく恋人同士。
それを見たパーティ会場に出席していた貴族の子弟の間から「どういうことだ?」と、言う声が漏れてくると同時に、私とレオン様を交互に見てくる貴族たち。
それは、そのはず。
いくら王族と言っても、まだ王太子止まりであり、国王陛下や王妃様が決めた婚約者をパーティ会場で一方的に、婚約破棄するなんて前代未聞のことだから。
少なくとも、私が、王妃教育として、王国の勉強をした歴史の中には、こんな事はなかったはず。
「レオン様……そんな……」
私は、目を大きく見開く。
それは、信じられないと言った演技を醸し出すように。
心の中では、これで王妃という余計な重責や面倒事から解放される事に心の底から喜びながら。
「すまない。エリーゼ、だが、もう自分を偽ることはできないんだ」
私は努めて冷静に応対することを心掛ける。
――10年前、私が小さかった頃。
公爵家であり、回復魔法が使えるというのが偶然に分かった時。
魔法の才能は母から子に遺伝するという事で、魔法を使える血筋を取り込みたいという王家の意向で、私は未来の王妃としてレオン王太子殿下の婚約者になってしまった。
そして未来の王妃として英才教育と言う名の拷問に10年も耐えた。
大好きな両親とも引き離されて、お兄様とも殆ど会えずに!
私は自分の人生を半ば諦めていた。
そこに、まさかの逆転劇が起きるとは思わなかった!
「……分かりました。お幸せに――」
本心を気づかれたらいけない。
私は目元を抑える仕草をしながらパーティ会場を後にする。
もちろん、会場中の貴族は、雰囲気を察してくれたのか誰も声をかけてくる方、追いかけてくる方はいなかった。
私は、未来の王妃だからと、特別に用意して頂いた部屋へと入り、後ろ手にそっと扉を閉める。
「お嬢様、どうかされましたか?」
「大変な事になりましたわ。レオン様に婚約破棄されました」
「ええっ!?」
私の言葉に、幼い事からメイドとして従者としてメレンドルフ公爵家に仕えてくれているウルリカが驚きの声をあげた。
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