ラッキー ―20.11.26.
監督:ジョン・キャロル・リンチ
「会心のスマイル」
クリントの「運び屋」もクセの強い年寄りだったが、こちらの主人公も負けてはいない。
紡がれる平凡な日々に潜む大問題。
やがて訪れる死と果たしてどう、向き合うのか。
描きようによってはいかようにもハードにできる物語は、しかしながらのんびり静かにまとめられており、とにかく受け入れやすかった。
いっけん無関心そうな面持ちでありながらも、自身の変化に密かに右往左往する主人公。
そうして対峙する問題はこれまでの人生の総決算なら、注がれる英知も重ねた年令分だ。
終始、主人公視点ゆえ高齢者の目から見る風景を疑似体験もできる。
ちょっとばかり時間の流れが飛んだり、縮んだり、ぼうっとした具合が妙にリアルでたまらなかった。
そんな超省エネ出力にて端的に表される発言の数々は、のんびり物静かな物語に重く痕を残しもする。
果てに主人公の得た結論から醸し出される会心の笑みは、
誰もがお手本にしたくなるものだろう。
思うに子供と年寄りの日常は、共に未知なるものにまみれているのかもしれない。
十年後、また見てみたいと思える作品だった。
果たしてそのとき自身はどう感じるのか。
若い時、年寄りとはどういうものなのかよく分からなかった。
分ったフリでいてもそれは間違いなくステレオタイプ、というヤツだった。
自身もぼちぼち足を突っ込みかけてようやく、
身体からくる老化と、それら情報が脳にもたらす変化をリアルに感じ取ることが出来ている。
病老死は誰も逃れることのできない事象ながら、本当に若い時には実感が持てない。
この不思議に、眠って意識を失っても明日、いつも通りが訪れると信じて止まない人間の不思議を重ね合わせる。でないと明日、死ぬかも、動けなくなるかも、熱がでるかも、といちいち未来を恐れることになるわけで、そりゃ、地獄だ。
変わらず続くと信じながらも、いつか必ずゆっくりとソチラへシフトしてゆくグレーゾーンこそ、こうして良質な映画で疑似体験しておくのも、一つの知恵、学びではないかと感じる。
そのうち「老い」をテーマに作品を書いておこう、とも考えている。
実際、早死にが多かった作家業界でも近年、長生きするようになったことから、
過去ほどんと見られなかった「老い」というテーマが新たなジャンルとして立ち上がっているらしい。
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