まともな人と知り合えない後輩

「転生者相互共助会?なんですか、それ?」

「その名前の通りだよ。この世界に何人もの転生者が居るのは知ってるだろ?」


確かに、初めてこの世界で出会った悪徳商人から何人かの転生者の話を聞いた。

有名になっている奴の話しか聞けなかったが、恐らく有名になっていない転生者もいるであろう事は予想できる。


「この俺とユウキじゃ、この世界に来た時間はズレているよな。そのパターンが何通りもあるんだよ。俺よりもずっと昔にこの世界に来た人もいれば、お前みたいについ最近来た奴もいる。そして、この世界は想像よりもずっと厳しい世界だったんだ。」

「だから成り上がれるほどの力がない転生者たちが力を合わせて助け合っていくための組織が出来た、ですか?」


そう言う事だ、と言いたげにタガミ先輩は頷く。

なるほど。実際に俺も悪徳商人に騙され、身ぐるみ剥がれたが、他にも似たような事例が無いわけではない。

確かに一人ではそのまま野垂れ死んでしまう。

しかしそう言った知識や情報に疎い転生者たちが結びつくことで生き永らえ、今日に至るという訳か。

最初はそんな組織なかったんだから、ある意味良い時代に転生できたとも言えるだろう。


「その転生者相互共助会に向かってるんですよね?」

「そうだ。だけどその前に、この街に入る前に言ったことは覚えているか?」

「赤い装備を身に着けた兵士には逆らうな、でしたっけ?」

「そうだ。もし破れば、何かあっても俺はお前を助けられないからな。」

「えぇ………。なんで「そこの商人、止まれ!」え?」


歩きながら先輩と話していると声を掛けられる。

その声の先には、


「お前ら卑しい商人どもが生きていけるのはウラッセア共和国の恩恵を受けているからだ。では偉大なる共和国に対して恩を返すにはどうすればいいか、分かるよな?」


赤い鎧を着た傲慢そうな兵士がいた。

いきなり声を掛けて来たかと思えば、何やら訳の分からない事を言っている。

俺が困惑していると先輩は兵士に歩み寄り、


「もちろんです。こちらをお納め下さい。」

「ふん。物わかりが良いようだな。行っていいぞ。」

「はい。」


恐らく通貨が入ったであろう袋と商品の一部を渡した。

すると兵士はそれを受け取り、離れていった。

意味が分からない。


「先輩、今のは?」

「目的地に着いたら説明する。早く行くぞ。」


先輩に話を聞こうとするが、足早に先に進むことを優先し、答えてくれない。

最初に出会った悪徳商人と言い、今の傲慢な兵士と言い、今のところまともな現地住民と出会ってないんだけど。

一体何なんだ、この異世界は。

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