6
世にも恐ろしいその妹の正体とは、
何を隠そう……僕の妹だぁっ!!
「むりむり、む、むり! むりだから! 前髪切るとかむりだからっ!」
「っ……くはっ……」
「あれ? 兄ィ? たいへん、兄ィが死んだ!」
「逝きてるわ!」
僕が死の淵への日帰り旅行へ逝きかけたのはさておき、ことの経緯は。
入学式早々、僕に涙を見せた(というより目撃された)紗凪の悩みは、所謂、恋の悩みだった。僕はその悩みを、紗凪を
そこでまずは見た目からと、長い前髪を切ることにしたのだけれど、逃げ回るものだから部屋の隅に追いやり両手首を片手で拘束し、太ももに跨るように制し、いざハサミを髪にといったその瞬間に、とんでもない力で拘束を解かれた後、強烈な蹴りを大事な部分に喰らわされたわけである。
悶絶とは正にこのこと。
「顔が見えないと、彼氏どころか友達も出来ないぞ?」
「ま、ま、前髪を切るなんて、そんなことしたら、ま、眩しくて失明しちゃうよ!」
「するか!」
少し暴れたものだから、着ていた部屋着がはだけて肩が露わになっている。白い肌にほんのり赤みを帯びた華奢な肩は上下に揺れる。
「ほら、観念しろ紗凪〜」
「ひぃっ!?」
壁を背に震える紗凪を見ていると、何だか変な気分にならなくもないけれど、ここは心を無に還し、前髪を切らせていただこう。チョキチョキしちゃうから覚悟せい。
「やっぱりむりぃ! 世界はわたしには眩し過ぎるんだよ!」
「ぶふぁっ!」
両手を僕の胸に押し当て、渾身の力(恐らく全力)で押すものだから、僕の上体は激しく仰け反り、そのまま部屋のフローリングへ向かって降下していく。
咄嗟に掴んだ細い手首も道連れに。
ドスン、と、鈍い打音。後頭部を強打し、少しばかり意識が遠のく僕の視界には、僕に覆い被さるように胸を押し付ける妹の姿。
はだけたシャツから、漏れ出さんばかりの果実は形を変え、僕の胸板に馴染む。前髪が乱れ、垣間見えた双眼は目を見開き床に押し倒された僕を移し込んでいた。
鼓動が重なる。今、わかったことが一つある。
紗凪の身体は大人への階段を着実に登り始めているということだ。
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