第363話 17章:美女とヴァリアント(15) SIDE スィアチ
SIDE スィアチ
食料を求めて繁華街に出たオレだが……。
つけられている。
デモを見物に行ってからだ。
ヴァリアントとしての気配を隠すのは得意な方だし、現場でもかなり気をつけた。
それなのに明らかにオレをつけている。
つけてきているのは人間だ。
オレに気付き、つけられる時点でまともな人間なのかは怪しいところだが。
あのデモにオレが顔を出すと読み、はりこんでいたのか。
だとしたら、オレもなかなか有名になったということだ。
しかも、オレのことを忘れていないらしい。
いいね!
実にいい!
もっとオレを見ろ!
それはそれとしてだ。
つけているのは2人か。
なぜしかけてこない?
オレがブギーマンだという確証を得られるまで様子を見るつもりか?
それとも根城に案内させるつもりか?
ひとまず『食事』は控えるとして……どうするかな。
いくら数で劣っているとはいえ、人間相手に負けるはずもないが。
いや、最近異常に強い人間の話を聞いたぞ。
たしか、ナンバカズとか言ったか。
強力なヴァリアントを何体も屠っているとか。
もしかして、今オレを追っているのがそうなのか?
だとしたら迷惑な話だ。
ちょっと派手にメシを喰っただけで、なぜオレが命を狙われなければならないんだ。
目立つのは望むところだが、命まで獲られるのはごめんこうむる。
もう少し逃げ回ってみるか。
オレを必死で追ってくる人間を見物するというのも悪くはない。
◇ ◆ ◇
少しだけのつもりが、人間達との鬼ごっこは夜が明け、さらに夕日が見えるようになっても続いた。
そろそろ飽きてきた。
だが、どんなにまこうとしてもオレに一定の距離を保ってくる2人相手に、下手なことはできない。
ナンバカズ、噂以上とみえる。
連中はたまに2人から1人になる瞬間がある。
どうやら食料を買い出しに行っているらしい。
オレも腹は減ってきたが、ふと気になったのは屋敷においてきた少女のことだ。
部屋に閉じ込めてきたのだが、食料は一切置いてきていない。
屋敷の地下室に缶詰くらいはあったはずだが、部屋にはカギをかけてきた。
人間が何日食べずに生きられるかは知らないが、水も飲まずにすでにまる1日が経過しようとしている。
あの少女はそのまま死体にするのは惜しい。
どうせなら、生きたままオレが喰いたい。
それまでは生きていてもらわなければ困る。
いったん屋敷に戻りたいところだが、ナンバカズを振り切るのはおそらく無理だ。
光学、魔力、精神、あらゆる幻惑系の術を使っても、その全てを突破してきた。
しょうがない。
いざとなれば少女を人質にしよう。
オレは進路を少女の待つ屋敷へと向けた。
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