第175話 10章:テーマパーク(4) SIDE 宇佐野
SIDE 宇佐野
夏休みなのに難波君に会っちゃった!
もしかしてこれって……運命?
夏休みに親戚以外と会うなんて、ラジオ体操くらいしかないはずだもの。
きっとそうに違いない。
もうちょっとかわいい服を着てくればよかったかなあ。
でも、お母さんが買ってきてくれたやぼったい服しかもってないし……。
ううん……難波君はそういうの気にしないよね。
それに、私がちょっとオシャレしたくらいで彼が振り向いてくれるとは思えないしね。
そんなことより、妹さんのご機嫌をとっておくべきだったかなあ?
将を射んとせばまず馬を射よって言うし。
でもでも、私が初対面の人から高い好感度を稼げるわけないからなあ。
これでよかったんだよね。
だからと言って、このチャンスを逃して良いものだろうか。
難波君みたいな人、この先の人生で出会うことはきっとない。
私なんてどうせずっとモテなくてずっと独り身か、三十歳くらいになったら無理矢理お見合いさせられたハゲデブのおっさんと結婚させられるんだ。
なら、一生に一度くらい勝負をしてみてもいいじゃない。
彼は今週、妹さんとキャットミーランドへ行くと言っていた。
ならば、そこでも『偶然』出会えば、彼にも運命だと感じてもらえるかもしれない。
せっかく手に入れたこの情報、有効に使わなきゃ。
私達の世代は、情報化社会を生き抜くんだもの。
時代は情報戦よね。
今週ということは、今日が火曜だから、5日以内にキャットミーランドを訪れるということね。
つまり、5日間通えば、難波君に会える可能性があるということ!
2回目までは偶然、3回目は必然。
つまり、キャットミーランドで出会って、もう1回偶然の出会いをすれば、運命を感じてもらえるということ!
◇ ◆ ◇
お小遣いがピンチです。
一人でやって来たキャットミーランドだけど、2日間遊びたおしてしまった。
おそるべし、キャットミーランド。
一人でもしっかり楽しめる最高のテーマパークだ。
はっ!?
私ってば何やってんの!?
この二日の間に難波君がキャットミーランドに来ていたら、出会えずに計画が破綻だよ。
よく考えたらチケットを買って入園しなくても、エントランスで待っていればよかったんだよね。
パークに入る人は必ずここを通るんだし、入園料もかからないし。
ああ……っ! でもエントランスまで来てしまうと、パークの魔力に引き込まれる!
ついチケット売り場にならんでしまうよぅ!
「うへぇ……これに並ぶのか……」
その時、聞き覚えのある……というか、毎日夢に見る声が聞こえてきた。
難波君だ!
隣にいるキャミソールとスパッツのかわいいお嬢ちゃんが妹さんだろう。
こ、心の準備ができてないよう。
私は思わず人混みに隠れてしまった。
開演時刻直後にも関わらず、ものすごい人なので簡単に隠れられた。
さすがアトラクションに1時間待ちは当たり前のテーマパークだ。
いきなり入口で出会ったら、待ち構えてたと思われちゃうからね。
出会うのはもう少ししてからがいいよね。
「あー、あのおねーちゃんキャットミーのげんてーカチューシャもってるー」
入園列に並んでいた小学校低学年くらいの女の子が私の頭を指さした。
「しーっ! 静かにしててね」
目立ったらバレてしまう。
ちなみに私がしているネコミミカチューシャは、パーク内で行われているショーで、1公演1人しかもらえないレアグッズだ。
昨日ゲットしたものを、せっかくなので、今日もつけてきたのである。
もちろん、学園祭のときのように前髪を上げたりはしない。
恥ずかしいからね。
周囲の羨望の眼差しがちょっと気持ち良いが、目立って難波君に見つかるわけにはいかない。
私は難波君の背中から目を離さないようにしつつ、入園列に並んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます