第113話 7章:オレにとってはぬるキャン△(17)

 魔力の通った骨の槍からの逃げ場はない。

 正面から炎で焼き尽くすこともできる。

 だが!


「双葉! 狭くしろ!」

「うん!」


 その一言で意図が通じたのだろう。

 双葉は神域絶界を、オレ達三人がぎりぎりおさまる程度に小さくした。

 その範囲外となった槍は全て消え去った。

 先行していた2本だけが、飛来してくるが、そのどちらもオレが素手でつかみ、粉になるまで熱で焼き尽くした。


「解いてくれ」

「うん」


 双葉が神域絶界を解くと、オレ達の背後には大量の槍が刺さっていた。

 やはり神域絶界の中にいると、外からはそこにいないものとして扱われるようだ。


「くっ……これは計算外だ。逃げ――」


 千花がきびすを返そうとしたその瞬間、オレは彼女に肉薄し、その首を切り落していた。


「バカな……速すぎる……貴様いった――」


 最後まで言わせることなく、オレは千花の首と胴体を焼き尽くした。

 今回は自分で限定結界を作り、炎魔法を使ったが、神域絶界があればそういった心配もなくなる。

 双葉を戦いに巻き込むのは本意ではないが、放っておいても首をつっこむだろう。

 なぜなら、立場が逆ならオレもそうするからだ。

 大事な兄妹だからな。

 なにより、最初の人生でオレを護ってくれていたのは、おそらく双葉だったからだ。


「不思議……この技を使うと、なんだか温かい気持ちになるの」


 双葉は自分の胸に手を当てて、小さく息を吐いた。


 スサノオの死に際を思い出すが、オレからは何も言うことはできない。

 それがスサノオの望みであったし、その方が双葉にもよいと思うからだ。


「でも……あれ……? なんだか目の前が白く……」


 ふらふらとオレにもたれかかった双葉はそのまま気を失った。

 魔力の枯渇である。

 いくら肉体と魂に適性があっても、魔力の絶対量が足りない問題は解決しない。

 当分はオレと一緒に使う方が良いだろう。

 技の特性を考えると、術者にバフをかけることもできそうだが、そのあたりは訓練を積むしかないな。


 それにしても、双葉がこの技を使えるようになってよかった。

 ピンチになっても、自身の安全を確保することができるからだ。

 同種の技を破れるような神族が現れない限りはな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る