第107話 7章:オレにとってはぬるキャン△(11)
肝試しのルールは簡単だ。
キャンプ場から少し下ったところにある墓場に行き、証拠のメダルを持ち帰ってくるだけである。
もちろん、登山やお参りに来る人のために、しっかり道は整備されている。
「いってらっしゃい……ふぁぁ……」
出発するチームを千花が見送ってくれるが、幼女はさすがにおねむらしい。
コーチに連れられて、コテージへと入っていった。
「なあ……歩きにくいんだが」
オレの両側から、由依と双葉が腕にしがみついている。
「男女で肝試しといえばコレかなって」
「そうそう」
二人は楽しそうに、オレの腕に胸を押し付けてくる。
「アニキぃ……」
一方、ガチで怖がって、後ろからオレのジャージの裾を引っ張っているのが真田だ。
「なんでお前が一番怖がってるんだよ」
「だって、幽霊はバットで殴っても倒せないんすよ?」
バットで殴れば解決する相手なら大丈夫、という発想の方が怖いんだが。
「情けないなあ。幽霊くらい倒せるよきっと。ねえ、双葉ちゃん」
「余裕です」
こんなときだけ仲の良い二人である。
真田が恐怖と砕かれたプライドのダブルパンチで涙目だぞ。その辺にしておいてやれ。
10分ほど山道を歩くと、あっさり墓場についた。
脅かし役を雇う金もないだろうし、まあこんなところだろう。
辺鄙な山にある墓場だけあって、規模は小さく、あまり手入れもされていない。
その少し朽ちた感じが、恐怖を煽っていると言えなくもない。
ただ、戻って来る先発グループと何度かすれ違うせいで、その雰囲気もわりと台無しだ。
「キャー! 難波君助け……えぇ……ハーレム……?」
由依の持つ懐中電灯が地面を照らす中、こちらに駆けてきたのは、鬼まつりだ。
髪型こそ清楚タイプになったが、おヘソが見えそうなタンクトップにホットパンツというラフすぎる格好が目の毒だ。
「まぶしっ! チョベリバ! ちょっと白鳥さん! 懐中電灯を向けないでよ!」
ジト目で鬼まつりの顔を照らしまくる由依を、鬼まつりが睨んでいる。
一つ前のグループで出発したはずなのだが、墓場の影に隠れて待っていたようだ。
気配は察知していたが、なにしてんだ?
「ちょっとまつりちゃん、ここは勢いが大事って……うわぁ……はべらせてるなぁ……」
続いて現れたのは、渡辺である。
ちなみにその後方で、中学生男子二人が墓石から顔だけだして、こちらを見ている。
渡辺とチームを組んだコ達か。
こんな茶番に付き合わされるとは、かわいそうに……。
「はべらせてるつもりはないんだが」
我ながら説得力皆無である。
「ほらまつり、がんばって!」
「え……でも……」
本人を前に何をやってるんだこいつらは。
「難波君のジャージ、まつりにも掴ませてください……」
鬼まつりがモジモジするたび、面積の少ない布から、色んなものがチラチラ見える。
「だめよ」
「だめですね」
「なんでお前らが答えるんだよ。ダメだが」
「オレの掴むところがなくなるのは困るっス」
チームの意思が初めて一つになった瞬間である。
ありがとう鬼まつり。
君の犠牲は無駄にはしない。
「チョベリバー! こんな恥ずかしい格好までしたのにー! うわーん!」
ちょっと涙目になった鬼まつりはキャンプ場へ向かって駆け出した。
恥ずかしいって思ってたんだな。
普段から短いスカートでパンツ見えまくりだったので、羞恥心なんてものはないんだと思ってた。
「ちょっとまつりちゃん! 懐中電灯持ってかないでー!」
その後を渡辺と中学生男子二人が慌てて追う。
なんなんだいったい。
いや、やりたいことはわかるが。
とりあえず、夜の山道で走るのは危ないぞ。
この頃の携帯にはライトなんてついてないんだからな。
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