第13話 2章:異世界帰りだと学校でも無双(4)

 昼食を終え、中庭のベンチでのんびりすごすのどかなひと時。

 こんな時間は何年ぶりだろうか。

 十七年? いや、転生する前も含めるともっとだ。

 おまけに、隣には初恋の金髪巨乳黒タイツ美少女。

 いや、この黒タイツは兵器なんだが。


 実に幸せだ。

 こんな時間がずっと続けば良い。

 そう願うだけでは、簡単に壊されてしまうものだとオレは知っている。

 オレがこの時を護るんだ。


「明日からはお弁当持ってこなくていいんだからね」


 弁当箱をしまいながら由依が言う。


「いやいや、それはこっちのセリフだ。弁当なら双葉が用意してくれるし、これからはオレと交代にしようと思ってるからな」


 今日は由依が用意してくれたものと二食分食べたが、腹が破れそうだ。

 肉体は強化したが、胃袋は急に大きくなったりしない。


「だから、私が毎日作ってきてあげるってば」

「正直嬉しいが、わるいだろ……」

「嬉しいならいいじゃない」

「材料費もかかるし」

「お金ならあまってるし」

「高校生とは思えないセリフ!」

「高校生に扱えない金額を自由にできるもの」

「せ、性格変わってないか?」


 以前は家柄のことを話したがらなかったはずだが。


「カズと一緒に戦えることになったんだもの。使えるものはなんでも使わなきゃ」


 そう言って、由依はオレの手をぎゅっと握ってくる。

 体が若いから精神もそれにひっぱられているせいだろうか、すごくドキドキするぞ。


 問題はこの中庭、教室から丸見えだということだ。

 イチャついてるようにしか見えないだろうなあ。

 いや、反論のしようもないわけだが。

 こういうことしてると、パターンとしては……。


「なあ由依ちゃん。オレの誘いを断ってこんなやつと昼飯かよ」


 からんできたのは、サッカー部のイケメンこと加古川だ。


「そらきた」


 オレの漏らしたセリフに、加古川はぎろりとこちらを睨んだが、すぐ由依へと向きなおった。


「オレと付き合えって。由依ちゃんと釣り合うのは、この学校だとオレくらいだと思うぜ?」


 よくもまあそんな恥ずかしいセリフを臆面も無く言えるものだ。


「家の方針もあって、誰とも付き合うことはできないの」


 優しいよそ行きの笑顔をしてはいるが、はっきり断りたいところを、がんばって言葉を濁しているという顔だな。


「せっかくの高校生活、そんなのはもったいないぜ」

「そうは言われても……。そうそう、私はカズと付き合うから! 今、家の許可をもらってるところなの」


 そんな思いつき丸出しな感じでオレを巻き込むんかい!


「こいつと……? こんなひょろ男がいいのか?」


 ほら、全然信じてないぞ。

 これでもけっこうガチガチの体にしてあるんだが、イメージってのはこわいね。


「ひょろ男かどうか、試してみたら?」


 ちょっと挑発的すぎませんかね。


「ケンカはよくないぜ」


 どの口が言うんだよ、このクソイケメンは。


「そんな昭和みたいなこと言わないわ。次の体育って、男子は剣道でしょ? そこで勝負をつけたらどう?」

「オレが勝てば付き合ってくれるんだな?」

「いいわよ」


 この展開こそ昭和じゃないか?

 加古川につきまとわれても面倒だ。

 これでケリがつくなら、それも良いだろう。


「カズもそれでいいわよね?」


 由依は「やっちゃえ」とばかりに、ぱちんとウィンク。

 学校ではのんびりすごそうと思っていたんだが、こうなってしまった由依とすごして行くなら、そうもいかないな。

 何より、前の人生では天敵とも言えるリア充に一泡吹かせられるのは、ちょっと楽しみだ。

 そういや、この頃はまだ「リア充」なんて言葉、なかったんだよな。

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