第20話

 私の県についてネットで検索すると、ヤンキーのノリが古いとよく言われる。理由は田舎寄りで偏差値が低めの学校が多いからだとか。うちの市は県庁所在地だからそこそこ都会ではあるけど、隣の茂久市は山やら田んぼやらで一目で田舎だと分かる。過疎化で廃校も増えてるし、結果的に不良の溜まり場になっちゃってるのよね……


 そんな県内一の不良校、茂久市第六高校まで赴いた夜羽は、校門前で煙草吸ってるごっつい人に声をかけられた。


「よぉ、二代目。わざわざ来てもらってすまねえな」

「お、お久しぶりです、稲妻さん」


 早くもビクビクと腰が引けながらも、挨拶を交わしている夜羽。あの人が元裏番、稲妻龍人か……身長は2m近く、Tシャツの上から分かるほどムキムキだ。傷だらけの強面に眉も薄くて、私服だと完全にあっちのヤーさんにしか見えない……


「相変わらず面白ぇ体質してんな、お前は」


 直接ボコり合いをしただけあって、夜羽の二重人格について知っているようだった。ポイ捨てした煙草を踏んで火を消すと、稲妻さんは苦笑しながら詳細を話した。


「本当なら地元の奴らだけで片付けるべきなんだが、OBがあんま出張るのも良くねえんだ。一応俺も社会人だからな……。だが、あぶはともかく花火が心配なんだ。フラフラしてっと恨み買うからな」

「あの……なら稲妻さんは、木前田先輩とはどうして別れたんですか?」


 夜羽がおずおずと手を上げて訊ねる。何気に正義感強いから、ヤンキー同士の抗争はもちろん、煙草のポイ捨ても気になっているようだが、さすがにバカ正直に指摘はしない。今の質問も結構突っ込んでるけど。


「別れたっつーか、元々高校にいる間だけの付き合いだったんだよ。あいつも番張ってる奴のレコって称号が欲しいだけだ。まあ……それでも俺は、あいつに惚れてんだよ。そろそろ調子こいてるの分からせなきゃいけねえけどな」


 言いながらどこかに電話している稲妻さん。ガラケーなんだ……まあそんなに機能を使わなければスマホじゃなくてもいいんだけど。


「よう、俺だ。元気してたか? 待て、切るな。久しぶりなんだから出てこいよ。どうせサボリなんだろ? 飯くらい奢ってやる。それと、前に会いたいっつってたイケメンも来てるが、今の男に操立ててるなら大人しく授業戻れ。校門前で五分だけ待ってるからな」


 それだけ伝えると、稲妻さんはさっさと電話を切ってしまった。一応社会人と言いつつ、授業をサボらせる大人って……まあ彼女も不良みたいだけど。


 待つ事五分、校舎からガムを噛みながら悠々とこちらに歩いてくる、ケバいギャルの姿があった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る