第47話 特訓の成果は上々です!



それからというもの。

俺たちは時間を合わせては、草原での特訓を繰り返した。


「どうよぉ、結構やれた方じゃない、これ!」


モニカさんは、俺の方へやってきて、手を開く。


「触ってもいいよぉ? 私の手ごと!♡」

「なっ、なにを言ってるんですか!」

「ちょっとしたお姉さんの冗談ってやつ? どう、どきっとした?」


砂を払って、モニカさんはぱちりとウインクをした。


その粒は、はじめよりかなりキメが細かくなっている。


「ヨシュアくん、うちもやった。どう、これ」


ソフィアも、同様だ。

二分割がやっとだったことを思えば、目覚ましい進歩である。


「いやぁ、ほんと依頼してよかったぁ。ヨシュアさん、本当に教え方がうまいよ〜」

「買いかぶりすぎですよ。教えたのなんて今回が初めてですし」

「じゃあ、なおさらじゃんか〜。初めてでこれは、才能があるってこと! 今までやってきたどんな鍛錬よりも、身になってる実感があるよ」


訓練の内容は、もちろん石を割るだけではなかった。


団体戦である以上、個人の技量より全体での統率が取れているか否かが、重要な要素となる。


それゆえに半分近くの時間は、連携の強化に当てていた。


上級ダンジョン・常闇の森へと足を運ぶ。


相手取るのは、狂龍・クレージードラゴンだ。

俺が追放されたとき、『彗星の一団』が狩りへと出向いていた魔物だ。


ソフィアによれば、


「……あの時は思い出すだけで最悪。コボルトに好き放題やられたの。サンタナは、森に火をつけるし」


俺は苦々しく笑うしかなかった。

彼ならやりかねない、と思ってしまっていた。


とにかくクレージードラゴンが強敵であることは間違いないのだが…………。

正直、俺一人でやる分なら造作ない。


ただし、今回はあくまで昇格試験のための訓練。三人それぞれの力を生かして、チームワークで倒すことがテーマだ。


キシャァァ、と。

奇声を上げて、地面をのたうちまわる狂龍。


まずは動きを止めねばならない。


俺は刀を十字に振って、合図を出す。

本番を想定し、言葉を使わず意思疎通を行う練習をしていた。


この一週間の成果といっていいだろう。

モニカさんは、心得てくれていた。


まず光の鞭を巧みに操り、クレージードラゴンの首へと巻きつける。


大きな図体が少し怯んだところ、


「モニカさん、光魔法で抑え込んで!」

「うん、おっけー。厳しき檻となれ、『光の牢』!」


格子上の囲いで、がっちりと狂龍を捕らえる。

集中力を鍛える修行の副産物として、習得した魔法だ。


「私の出番だねっ。」


ミリリが魔導で支援をすれば、うん、強度も申し分ない。


狂龍は、首が長いのが特徴だ。

その首を乱暴に振って、拘束を解こうと暴れるが、持ち堪えている。


「ヨシュアさん! お願いっ!」「ヨシュア、今だよっ」


なんだか美味しいところだけいただくようだが……。

武器の性質上、仕方ない。


蒼の太刀を、俺は鋭く抜刀。使用したのは、


「氷の精よ、我が太刀に加護を。『凍刃一閃』!」


新魔法だった。

クレージードラゴンが姿を消すのを確認してから、俺は納刀。


ステータスを見れば、こうなっていた。


_____________


冒険者 ヨシュア・エンリケ


レベル 390


使用可能魔法属性


火、水、風、土、雷、光、氷【New‼︎】


特殊スキル


俊敏(高)、持久(高)、打撃(高)、魔力保有(大)、広範探知(高)、目利き(高)、隠密(中)、治癒・解毒(高)


ギフト

【無限変化】

あらゆる武器や魔法への適性を有する。

一定以上の条件が揃うと、スキルを習得可能。


武器別習熟度

短剣 SS

長剣 S

大剣 B

弓  B

ランス C

魔法杖 B

鞭 B

……etc


_____________


この一週間で、新属性を得ていた。


特訓の成果として、『蒼の太刀』が手に馴染んできた証拠と言ってよかろう。

風と水の属性魔力を同時に生み出せるようになったらしい。


レベルも、400の大台が窺えるところまできた。


「ヨシュア、さっすがぁ!」

「……お疲れ様。とくに改善点って言われても、うちには分からなかったかな」


ミリリが俺の胸へダイビングを決める。

分析に回っていたソフィアも、優しく労ってくれた。

それを側からみて、


「君ぐらい強い人が本当にパーティーメンバーにいたらなぁ」


やや切なそうにモニカさんは呟く。


小さな声だった。ひとりごとだったかもしれないが、俺の耳はそれを拾っていた。


「仮というか、借りですけど、今俺たちはパーティー組んでるんですよ」

「そうだったねぇ。うん、かなり心強いかも」

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