第11話 やっぱり俺はレンタル冒険者向きらしい。

あくまで依頼人であるサーニャのための、クエストである。


その盾が一時的とはいえ使えなくなった以上、再び仕切り直さざるをえなかった。


俺たちは、ギルドへと帰ってくる。


喫茶にでも入って、明日以降の作戦について相談をしようとしていたのだが、


「よかったら、私たちとパーティー組みませんか! というか長い耳って可愛いかも〜!」

「あ、俺も勧誘したいかも。ちょうど盾職探しててさぁ」


入ってすぐ、待ちうけていたのは、熱烈な勧誘だった。


それも、サーニャにである。

あっという間に、エルフ少女の周りを冒険者らが取り囲んでしまった。


その端くれ、ミリリと二人取り残される。


「……えっと、どういうことだ?」

「たぶん、二日連続で目立っちゃったから、そのせいじゃないかな。

 ここ、初級ラウンジだしさ。

 初心者さんばっかりのパーティーにとっては強さも大事だけど、知名度って結構大切なんだよ」


なるほど、そんな考え方もあるのか。俺とは真逆オブ真逆。


なんて思っていると、ミリリはくるり半回転。

俺と正対する。


「ヨシュアはむしろ目立ちたくないみたいだけどねー」

「……なんのことだよ」


図星をつかれたが、とりあえずしらを切ってみた。

ただ、そのあまりに純真な目は逃してくれない。


「気付いてないだろうけど、目線逸れてるからね? そうじゃなくてもバレバレ。

 君はとーーっても強いっ! 追放されるどころか、引く手数多すぎるってくらい才能に溢れてる。

 けど、なぜかそれを隠してるんだ」


名探偵のごとく、顎に手をやり首を斜めに捻るミリリ。


びしっと俺を指差したと思ったら、


「やっぱりレンタル冒険者向きだねっ」

「……えっと?」

「えっと、じゃないよーだ。

 レンタル冒険者は、あくまでレンタルだからさぁ。俺が、俺が〜な人はダメなんだ。

 体験じゃなくて、このまま本当に始めない? もちろん無理強いはしないけどねっ」


よもやの流れから、こちらでも勧誘が始まった。


俺は改めてこの二日を振り返ってみる。

今にして思えば、追放されたことを気に病む暇もないほど、充実していたように思う。


それもこれも、ミリリに出会ったおかげだ。

もしあそこでスカウトされていなければ、今は何をしていたことやら。


俺は承諾しかけて、飲み込む。

一つだけ、聞いておきたいことがあったのだった。


「なぁ。ミリリはさ、なんでレンタルにこだわるんだ?」


別にパーティーを組めばいいじゃないか、と思うのだ。

昨日、柄の悪い連中を追い払った際に使った魔導の類は、明らかに突出していた。


そのまま返すようだが、彼女こそスカウトの機会は多いはずだ。

下世話なことをいえば、その美貌だって武器である。


「困った人を放っておかないため、かなぁ。

 冒険者レンタルをしにくる人って、たぶんなにかに困ってるから借りにくるんだよ! だから、この仕事をしてれば人助けもできちゃうってわけ。

 パーティーやるよりお得じゃん♪」

「……すげぇな、人がよすぎだろ」

「そんなことないよ、私の使命ってだけ。それに、お金も入るし、一粒で三度美味いのだ! すごいでしょっ」


ミリリが茶化し半分、真剣半分に言う。


ちょうどその時だ。

サーニャを囲んでいた冒険者たちの群れが、縦に割れた。


その中からサーニャは無理に身体を抜く。

盾で顔を隠すようにして、外へと走り出した。


「あ、あたし、そういうのは入りませんから! 仲間なんて、いりませんっ!」


最後に叫んだ言葉が、引っかかった。


たしかパーティーを組みたいからその前にお試し、という話ではなかったか。

微妙に抱いていた違和感が、俺の中で形となる。


「私に言わせれば、ヨシュアこそ、優しすぎるよっ。追いかけるんでしょ?」

「……そのつもりだけど」

「じゃあここは私に任せてっ。場の収拾をつけて進ぜよう〜!」


やっぱりミリリちゃん、すげぇできた子だわ。


「あ、一つ忠告! 目立ちすぎないでよっ? もうヨシュアを変なパーティーに取られたくないからっ」

「ーー言われなくても、そのつもりはないっての」

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