第6話 【side:サンタナ】追放した側は、低級魔物にやられたい放題なうえ判断ミスを犯す。

『彗星の一団』はそれぞれの思いを抱えつつ、クエストを再開する。


狩りの対象は、クレージードラゴン。


危険度でF〜Sランクに分類される魔物の中、Aランクと高い格付けをされている。


それでも、『彗星の一団』は名の知れたパーティー。

これまでも同等レベルの魔物を相手にしたことはある。


その時は大きな苦労をすることもなかったのだが、


「くそっ! なんで、こんな雑魚に僕の剣が効かないんだ。刃が弾かれるっ!?」


それ以前の問題であった。

クレージードラゴンの生息地である、森の奥の祠にたどり着けもしない。


「ガルルゥゥ!!」


ランクCであるコボルトの群れにさえ、歯が立たなかった。


鋭い牙を剥き出しにして襲いくる獣に、サンタナはてんてこまいにされる。


サンタナは自慢にしている、高級な防具を引っ掻かれ、傷物にされていた。

衣装も破られて、およそ鍛えられているとは言い難い細腕がのぞく。


ヒーラーであるルリは必死にサンタナへヒール魔法をかけるのだが、これも効果が薄い。


「風の精霊よ、……私の願いに答えて。オート連弾!」


サンタナに不満こそあれ、パーティーはパーティーだ。

ソフィアは後ろから弓での援護射撃に出るのだが、いつもほどの威力はない。


「……ヨシュアくんが、うちの矢の効果が高くなるように、魔物を弱らせてくれてたんだ…………」


ソフィアはその原因に、いち早く気づいた。


そう、普段は敵のレベルや相性を鑑みて、ヨシュアが適度に敵を弱らせていた。


むろんサンタナもその恩恵をたっぷり受けていたのだが、まさか自分が無能だと決めつけた男に、補助されていたなどと信じられるわけもない。


そして、自惚れに落ちた男はヤケを起こした。


「くそっ! こうなったら! 燃えよ、我が太刀!」


この状況で使う技としては、最低の選択であった。


たしかにコボルトは火を怖がるが、ここは森。少し考えれば、使うには危険だとわかりそうなものだが、そういった判断も普段はヨシュアが下していた。


火は枯れ葉や、倒木などに引火し、色の悪い黒煙を巻き起こす。


「う、うわぁ!?」


三人はもう逃げ出すしかなかった。


一人身長も小さく、歩幅の短いルリは転びかける。


味方のことより我が身だとばかり、走るサンタナは振り向こうともしない。

手をのべたのは、ソフィアだ。


「……ルリ! だ、大丈夫?」

「う、うん。なんか最近転びかけても、寸前で起き上がれるんだよっ」

「…………きっとヨシュアくんが守ってくれてたの」


ソフィアは、ルリの防具の腰付近に括られた魔石をさす。


「これ、たしかヨシュっちが持っててって私にくれたやつ」

「…………うん。そういうこと。とにかく帰ろう」


やっぱりヨシュアが辞めると言い出すわけがない。


ソフィアの中で、願望だったものが、確信に変わりはじめていた。




____________



【お願い】


もし、よければお星様を光らせて評価等いただけましたら幸いです。飛び跳ねて喜びます!


たかた

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