サクラコの学校①
サクラコと共に学校へ向かう。
こんな田舎の学校だから、学校まで徒歩でめちゃくちゃ時間が掛かるとかそんな事も想像していたが、実際学校までは20分程と小学生の通学時間としては比較的平均的な時間だった。
学校のある方向には俺はまだ行ったことがなかったので、色々と発見もあった。基本的に畑しかないが、山から川が流れてきていて、そこが五メートルくらいの川幅があったので夏場なんかはそこで水遊びでもできそうだった。何か魚がいれば釣りでもしてみたいな。
他にも野菜の無人販売所なんかもあった。サツマイモやカボチャ等今が旬の野菜もあれば、これから冬に向け旬になるネギやレタス、ほうれん草なんかも売ってあった。どれも格安で、一つ百円。安いからと言って形が悪いとかそんな事もなく、スーパーで売っているのと遜色ないものだった。お得が過ぎるぞ。
とまぁ、そんな具合で通学路の確認をしながら学校に到着したわけだが、学校は都会のものとは異なり、木造建築の平屋のような見た目をしていた。広めの校庭があるから学校だと遠目で判断できるが、もし校庭が無かったらパっと見ではそれが学校だと分からないだろう。
「……サクラコ、ここが学校か?」
「うん、そうだよー!」
「まぁ何と言うか……風情があるな」
風情がある、なんて感想が出てきたが、実際この学校は学びの環境としては良いだろう。学校の敷地から出て少しの距離に山があり、川があり、畑がある。こんな自然に囲まれた環境で勉強ができるなんて、俺としては羨ましいと感じるよ。
校庭にも鉄棒や砂場といった一般的な小学校にあるような物もしっかりとあるので、運動もそれなりに出来そうだな。
体育館みたいな施設はここから見た限りでは確認できなかったので、もし許可が降りたらだけどこの学校を見学でもしてみたいな。
「はやく中に入ろー!」
サクラコはそう言いながら俺の手を取り昇降口目掛けて駆けだした。
昇降口には小さいながらも下駄箱があった。やはり都会の学校のように下駄箱が列をなしてたりはしないようだ。まぁ、当然と言えば当然か。生徒はサクラコしかいないんだから下駄箱が沢山あったところで無駄になるからな。
「おや、来たか。今日も早いな」
「あっ、先生おはよーございまーす!」
どうやら先生がいたらしくサクラコは元気に挨拶する。俺も挨拶しないとだな。
俺はまだ姿が見えないが声の聞こえた方向を向き挨拶をする。
「おはようございます、貴方がこの――」
俺は挨拶の途中で言葉を止めてしまった。というのも、先生の容姿が個性的過ぎたので目を疑ってしまったのだ。
先生は女性で、身長は百五十センチも無いくらいの小柄で、服装はジャージの上に白衣を着て覗く左手には包帯が巻かれている。長く伸びた前髪から覗く目元は左目に眼帯がしてあり、なんというか痛々しい姿をしていたのだ。
「ふむ、見ない顔だな。……成程、先程の磁場の歪みは貴公がが侵入したからか。して、貴公は何者だ?何用がありこの地に足を踏み入れた?」
……何ですかその喋り方は。あれですか、包帯とか眼帯は怪我をしてるんじゃなくて俗にいう厨二病ってやつですか。
てか何だよ磁場の歪みって。俺は歩く電磁誘導体かよ。銅線を身体に巻き付けてるとでも言いたいのかよ。
「し、失礼しました。俺は喜多孝文って言います。この子の、サクラコの保護者みたいな感じですね」
「……ほぅ、”
「ブロッサ……は?」
うん、完全に厨二病だ。重症だ。……やべぇ、厨二病って初めて見たよ。うわぁ、痛ぇ。共感性羞恥の塊みたいな人だな。
「……サクラコ」
「なにー?」
「この人は、いつもこんな感じなのか?」
「そうだよー! 先生面白いよねっ!」
面白いの一言で済ませるわけが無いだろうが。田舎の学校にこんなに個性つよつよな先生を配置するんじゃねぇっ!
「そ、それで先生、お名前は……?」
「はっはっはー! 我の名が知りたいかっ! ならば聞かせてやろうっ!」
「あ、そういうの別にいいんで。さっさと名乗ってください」
敬語を使うのも馬鹿馬鹿しく感じてしまった俺は、ついツッコミを入れてしまっていた。
「なんでーっ! 今から私のカッコいい名前を言おうとしてたのにぃーっ!」
「それが素のキャラかよ。厨二病ならしっかりキャラ設定を順守して貫き通さんかい」
「ダメ出しされったっ!? サクラコちゃーん! この人怖いよぉーっ!」
先生はサクラコに抱き着き俺から顔を隠してしまった。てか、小学生に助けを求めるなよ。俺が助けてほしいくらいだよ。
もう色々と言いたい事はあるんだけど……何かもう疲れたよ。早く聞く事聞いて帰りたい。
サクラコの学校の先生は――強烈な厨二病かと思えば一つツッコミを入れただけで小学生に泣きついてしまうくらい弱い人だった。
●あとがき
また強烈な人が出てきましたね。もう設定考えるのが大変です。とはいえ、随分と前から学校の先生は厨ニ病にしようと決めていました。性別は最後まで悩んでいましたが……みんな女性の方がすきでしょう?
サクラコ「面白い人でしょーっ! わたしね、先生好きだよ!」
……確かに、君が好きそうなキャラの人だよね。
サクラコ「うん! でもねー、先生は私の事をぶろっさむふぇありー?って呼ぶのー」
まぁ、厨二病によくある症状ですよ。きっと、君の事が妖精に見えたんでしょう。知らんけど。
サクラコ「知らんのかーいっ!」
うぉ、サクラコがツッコミ入れた。
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