ネトゲ嫁から恋愛相談された翌日から、声が出せない幼馴染がやけに甘えてくる。
さーど
第一話:Ne:嫁からの恋愛相談 前編
【リアルと現実を、あなたはきちんと区別していますか?】
──
──
少し
緩やかな風の音、
隣で足を伸ばしているプリーストの青髪美少女が突然、そんな意味のわからない質問を投げてかけてきたのは──
□
──壮大な景色に、BGM。当然、これは現実の話ではない。
三、四年程前にSNSでブームとなったMMORPG……俗に言う、ネトゲというゲームジャンル。
それを俺は【セコン】という
そして、意味が
このネトゲの世界で、俺が初心者だった頃からのフレンド、兼、今ではゲーム上の“嫁”という存在である。
「リアルと現実を、区別……」
……うん。言葉を噛み締めても全く意味がわからないな。恐らく、言い間違えているのだろう。
俺はキーボードに両手を乗せて、カタカタと音を立てながらメッセージを打ち込んでいく。
すると、俺のユニットの頭上に「・・・」というふきだしが浮かんできた。
メッセージを入力中、という印だ。戦闘中以外は表示される仕様になっている。
メッセージを打ち込み終えたため、俺は右手の人差し指でエンターキーを叩いた。
ピコンッ、とポップな音が鳴り、左下のログに打ち込んだメッセージが表示される。
【区別していると思う?】
【えっ・・・】
いや返信早いな。返信まで数秒も無かった。いつもの事だが、ファウのタイピング速度に驚いてしまう。
というか、少し
【自身の
かなり早急に返信のメッセージを打ち込んで、ファウに理解を
すると、最初はフリーズしたかのように反応を示さないファウだったが、やがて。
【すみませんΣ(゚д゚;)】
【ネットと現実の話です!】
顔文字を混ぜ込んでのこの速さ。俺じゃなかったら、青髪美少女の頭上に浮かんだふきだしを見逃していたね。
「はは」
そんなファウの反応に、俺は現実の世界で小さく笑った。
ネトゲの世界とはいえ、仮にでも青髪美少女からそんなドジが出るのは、少しばかり可愛く感じる。
【それならちゃんと区別しているよw】
少し
だが実際、俺はリアルとネットの区別はしっかりとしているタイプだ。
つまり、
というか前述も言った通り、ファウの性別を俺は知らないため、それ以前な問題の気がする。
だけど、何の
【良かったです。もうセコンさんとは3年の付き合いなので、もしもの事があったら、と思っていましたが、
そう。お互い丁寧な言葉
ほぼ毎晩のように遊んでいるため、かなり打ち解けているし、ネトゲ上といえど
まあ、結婚した一番の理由は、実を言うと特典の優遇さ
とはいえ、相手がお互いにお互いしか思い
別に、断じて俺たちのフレンドが少なかったからではない。いや、実際少ないけども。
……でもそれはそれとして、ファウは一体どうしたのだろうか。
なにがって、彼女?はこれまで、どんな理由であれリアルの話をしたがらなかったのだ。
例を言うとするなら、先程も述べた通り性別、大まかな世代という基本的な情報さえ、俺はファウの事を知らない。
無論VCも未経験。そう思い返せば、俺は彼女のことを何一つとして知ってはいない。
ネトゲ上とはいえ、少しだけ嫁という言葉に自信がなくなってきた。
……まあ、リアルとネットを無駄に
【突然リアルの話なんて、どうしたの?】
──と、これまではそう納得していたが、今回はそんなファウからの話題。
それに、『もしものこと』とは何のことかも、気になる。
だから俺は、遠慮を見せずに
【えっとですね】
既に話す決心はついていたらしく、数秒もせずにログにはそんな前置きがされた。
青髪美少女の頭上にも、まだふきだしが浮かんでいる。
【実は私、明日から高校生になるんです】
ファウは以前のような隠す様子も見せず、正直に自分の
明日から……ということは、同い歳か。
どこかノリが合うな、と薄々感じていたのだが、同い歳ならば必然なのかもしれない。
すぐにまた青髪美少女の頭上からふきだしが浮かび、ファウは続ける。
【それで、ですね。ずっと好きだった男の子と一緒の学校に通うことにもなったのです】
……ん?ちょっと待てくれ。
ファウにとってはまだ前置きのつもりなのだろうが、もしかしてこれは……
困惑し始める俺のことなど露知らず、ファウは更に続ける。
【だから、高校生になったのを機に、その好きな人と親密な関係になりたくてですね】
【要するに、恋愛相談かな?】
どこかオブラートに包もうとしているようだが、俺は結論をドストレートに尋ねた。
そのメッセージを打ち込んだ手には、だらだらと冷や汗が
【・・・そういうことです。なんだか、セコンさんにでも話すのは恥ずかしいですね・・・(〇・ω・〇)】
肯定。その顔文字は、当然浮かぶであろう
「……まじか」
同い歳だけでなく、その言いぶりからして異性なのも驚きだが、それはまだ良い。
ただ……恋愛相談、か。と、俺は
「──俺、恋愛経験なんて全くないぞ……」
非常に苦しくなった事態に、俺は現実の世界でため息を吐いたのだった。
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