うつくしいひとについて

おちば

第1話

 「私、黒が好きなの」

小さな机にカリカリとイラストを描きながら彼女は言う

表情は見えない

抑揚のない篭った声でぼそぼそとしゃべる声を拾った

白い指に挟まれる黒いシャープペンシルを見つめる

迷いのない線が走る

爪はそろそろ切った方が良いほどの長さで、自己防衛のために伸ばしているのだとどこかで聞いた

癇癪持ちの家族が急に殴ってくるから、と

「できた」

机の上に小さな黒猫が生まれていた

後ろ姿でうずくまって、何かから逃げようとしているようだった

その生まれたての子猫になりたかった

きっと彼女は、安心したかったのだ

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