堕落と芸術

月雨新

学士のまんなかで

さあ僕という人間には

お見せするべき中身がない

食べたいものも好きなことも

読みたい本さえわからない


さきほど手洗い場でのこと

指に切り傷見つけたり

一体どこで作ったのかしら

さっきの詩集がそうかしら


すると僕とは滑稽なことに

「中也のせいだ」などと言う

中也の詩集が怪我させたのだ

紙や本など見ないふり


そしてなんとも皮肉なことに

僕にゃなんにも根拠がない

理由もなくちゃ意図もない

ただただ綺麗を吐いただけ


吐いただけ 吐いただけ

なんの根拠も意図もなく

吐いただけ 吐いただけ

気概もなくちゃ学もない


そんな大層たいそなご身分で

僕は本日も

ふんぞり返る ふんぞり返る……

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