第26話 塞翁が馬
広場を出て運河へ進む。
東門に向かうなら運河を行く船に乗った方が良い。
これから歩いて東門へ行ったら、相当時間がかかってしまう。
歩いている内に夜が明けたら、風車小屋が使えるか分からない。
クロウさんは夜に街へ入れなかった街人用だと言っていた。
夜間の門は閉ざされており、街の外から中へ入ることはできないそうだ。
ただ、見張りの門番が立っていて、その人に言えば門番用の通用口を開けてくれると聞いている。
外には見張りもいないので一方通行らしい。
この夜間の入場制限も、探索者が増えることにより、夜の都外の様子も変化することが予想され、緩和されるかもしれないとも聞いた。
探索者が生み出す需要と供給による利益を夜間の門番増員に充てることが話し合われているとも。
暗くなってからでは運河を渡る人も少なくなると思われるため不安だったが、夜の時間にも、幸い船はまだ運航しているようだ。
乗客待ちのタクシーみたいに運河に船が並んでいる。特に意味もなく熟練そうなおじさんの船を選んで近づいていく。
「キーッ」
「っえ!なに、どうしたの?」
船に近づくと、頭上のウサギが突然、高く大きな音を出す。こころなしか前足に少し力が入っている。待って!そこで足ダンするのはやめてっ!?
「キュゥキュゥ」
髪の毛を前足で軽く引っ張られる。え、なになに何事?!
引っ張られるがまま横を向いた私にウサギは前足で一艘の船を指し示す。
若そうなお兄さんが船守をする船で、お兄さんはつばの広い日よけ帽をかぶり変わった形の櫂を手にしている。
「あれに乗れってこと?」
「プゥプゥ」
高く鼻を鳴らすウサギ。正解のようだ。
ウサギに導かれて若そうなお兄さんの船に乗る。東門へ行くことを伝えれば、軽快な返事がもらえた。
ここから東門へは運河を下って一直線だ。心配いらないだろう。軽快に走る船の起こす風に身を任せて数分後。
今、私たちは西門にいる。
なぜ?
東と西って真逆だよね?確かに若いお兄さんで支流は迷いそうだなって思ったけど、広場から東門に行く道は本流だ。普通、迷いようがない、はず。
お兄さんは申し訳なさそうに広場に戻る提案をしてくれたが、東に向かって西に付く壊滅的な方向音痴だ。
次はどこに連れていかれるのか不安に思い辞謝した。
断られたお兄さんは謝りながら運賃を返してくれたけど、全額渡しておいた。場所は違うが、ここまで連れてきてもらったし。
う~ん、東の国へ行くつもりだったけれど、西門についてしまったし西に進もうか。西にも風車小屋はあるらしいし。
西の砂浜。海水浴には少し早い気もするが潮干狩りなら丁度良い。美味しい浅利が獲れたら良いな
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