第182話 最強の騎馬挺進隊

草木の生い茂るハワイの大地に無事に着地した二人は、覆い被さってきた二輪のハイビスカスとともに複雑に絡み合っている。


新海もノアも、生死の境を駆け抜けた緊張感から開放され、大地に寝そべり生還した安堵と安心感に包まれたこの状態をとても大切に感じて、あえて二人を絡めるラインを解く気になれなかった。


しかしそんな静寂は長くは続かない。


ドドドドドドドド!


二人は寝そべっている分、地面からの振動を敏感に感じ取る。


「何だっちゃ?!近付いてきてる?」


ドドドドドドドドドドドドドドド!!

「安心して!味方の日本軍だ!騎馬隊が来てくれた!!」


「騎馬隊?」


「cavalryさ、馬に乗って突撃するんだ。」


「えっ、!もしかしてJapanese samurai!?」


「侍か・・・・そう言われればその通りだ!あの姿は侍以外の何者でもない!侍が来る!さあラインを切るよ!」


新海はナイフを取り出して複雑に絡まったラインを切断してゆく。


ドドドドドドドドド!!!ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!度度度度度度度度度度度度度度度度度度度度度度!!!弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩弩!!!


遠くから馬蹄の音が地鳴りのように響き近付いてくる。


華華華華華華華華華華華!!!!!!

弩豪豪豪豪豪豪豪業業業業業業業業業業業業業業業業業業業ゥゥゥ!!!!

更に追い打ちをかけるように艦砲射撃の第二射が基地に着弾し、あらゆるものが吹き飛び衝撃波が伝播する!!


「キャアアアア!ソラ!!!!凄い響いて来る!!怖いョォ!!」


「大丈夫!安心して!味方だから!!!」


新海はラインを切り離し、ゴソゴソと落下傘をかき分けて立ち上がった。


騎馬隊の数は約100騎、先頭をひた走る指揮官がキラリと軍刀を振りかざすと、騎馬隊は駆け足から、並足へと足並みを変えて近付いてくる。


ドドドド!!ドドドド!!!!


「ワハハハハハ!!!ワハハハハハ!!!ワハハハハハ!!!」

佐伯隊長は高らかに笑い、軍刀靖光を抜き放ち、高々と掲げる!!!!


「全体ィィィィ!!!」

「ぜんたいィィィィィィィィ!!!」


「止まれぇェェェェイ!!」

「とまれぇェェェェェェェェエ!!」


部隊は復唱し、新海の手前で停止する。

ヒィィィィィィィン!!!!!

ブルルルルルルルルルゥゥ!!

人間の声に答えるように、馬も高らかに叫ぶ!

佐伯挺身騎馬隊は完全にハワイの馬を手懐け、人馬一体となっていた。


「無事であったか!!助けに参ったぞ!!!」


「ハッ!!有難う御座います!!私は空母赤城所属!海軍少尉!新海空であります!!偵察と観測任務を遂行中でありました!!」


「ほう、空母赤城の所属であったか!私は第25軍の挺進隊を率いる佐伯と申す!もう一人の搭乗員も大丈夫か?!」


二人が落下傘を見ると、落下傘はモゴモゴと動いている。


「大丈夫であります!!!ラインと装備が複雑に絡んでおりまして、失礼致しました!!」


「そうか、手伝おうか?」

「大丈夫であります!!!」

新海は間髪入れずに返答する!


「そっ、そうか、ならば良い、君達の闘い、最後まで見させてもらった!その練度、勇気、そして体当たりの度胸!!我々全軍に与えた影響は計り知れん!!!」

佐伯中佐の眼光は鋭く、新海も身動きが出来ない程の迫力である!


「君達は十二分に任務を全うした!!我等はこれより敵陣に突撃する!!!ここは早々に戦場となる!!君達は至急避難せよ!!」


第25軍第5師団捜索第5連隊、佐伯挺進隊隊長佐伯静夫中佐は、一瞬だけ優しい眼差しを新海少尉に向けると、跨る黒馬とともに後方を振り返る!


後方には、日本唯一の騎馬中隊が見事に整列している。


「皆の者!!!見よ!!!山下司令官も全軍に突撃命令を出した!!!我等に続き全軍が進撃を開始したぞ!!!」


「応!!!!」


「ならば、艦砲射撃の地ならしは終えたということだ!!あとは全軍で攻撃し、アメリカ軍を完膚無きまでに叩き潰す!!!」

「応!!!!!!」

「これより我等!!最強の騎馬挺進隊となり、先陣を切って突撃する!!!」


「王王王王王王王王王王王応応応!!!!!!!!」


「決して止まるな!!我に続けィ!!!突撃ィィ!!!!」

「突撃ィィ!!!!突撃ィィ!突撃ィィ!突撃ィィ!」


佐伯隊長を先頭に、騎馬中隊100騎は鋒矢(ほうし)陣形で突撃を始めた!!!

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