第7話 身体検査とご褒美

「君は、村上だな?」

「はいそうですけど」


南は何かを考えているようだ。

椅子に座りながら背もたれによりかかっている。

現在、実験室のような場所に連れてこられている。

辺りは様々な実験道具と中央に手術台のようなものが並んでいる。

智尋は逃げ出したいと思い、隙を見つけようと思ったが、そもそもこの場所がどこなのか確認できないため脱出は諦めた。

南は思考し終わったのか、口を開く。


「まあ当然か。お前は秋の弟だしな。死なないと思っていたよ。やはり血のつながった兄妹は共通して耐性があるようだね。」


何故か秋姉の名前が出てくる。


「なんで秋姉のこと知ってんだ?それになんでみんなを殺したんだ!!」


この前の仮面の男といい、この研究者といい、秋姉は何と関わっているんだ?


「秋は私の実験体だった。君たちも同じ実験体さ。この学校は適合者しか過ごしてはいけない。そのためにこの実験を行っているわけだが。違和感を覚えなかったか?全校生徒に対して校舎が小さいことに。」


なんとなくだが感じていた。それに秋姉があの時ごまかしていたのはこういうことだったようだ。


「この事は、誰にも言ってはならない。だから秋も君には言わなかった。」


そうか、けどあの時、のどかが自分のことを気にしろとか言ってたよな?

どういうことなんだ?このことを知っていたのか?


「とりあえず身体検査を始める。上を脱げ。それと今年の奴らは適合者が多かったな。嬉しいよ。」


何言ってんだこの人。ほとんどの奴が死んでんだぞ……

とりあえず、言うことを聞いていた方が良いな。

言われるままに従い、そして検査は終わった。


「異常はどこにもないようだな。では、適合者たちのところに案内しよう。」


適合者か………

少し緊張する。


今は長い通路を通っている。ヒールの音がカツカツと、とても響く。


「名前とかって教えてもらえたりしますか?」

「南愛華だ。」

「南さん、適合者って言ってましたけどいつから研究し始めているんですか?」

「適合者発見のための人体実験は3年前に始めた。」


姉は死んでいる可能性もあったわけだ。しかし、今の今まで生きている。きっと奇跡だろう。


「そろそろつくぞ。」


緊張してきた。やばい奴とかいそうだからな。

南は扉を開けた。

広々とした空間で、まるで秘密基地みたいである。

初めに目に入ってきたのは秋姉だ。


ん?


しかも隣にのどかまでいる。


「おにーちゃ~ん!」

「智尋くんこっちよ。」


何でのどかが適合者の集まりにいるんだ?訳が分からない。


「何でのどかがここにいるんだよ。」

「そりゃあ、あたしが適合者だからに決まってんじゃない。」


随分と調子に乗っているようだ。ドヤ顔でこっちを見てくる。


「いつから適合者になったんだ?秋姉のこともそうだが、俺が家にいてるときは全く気が付かなかった。」


のどかは経緯を説明してくれた。


「秋ちゃんがお弁当忘れていったから届けに行ったんだ。そしたら愛華ちゃんに見つかっちゃった。」


てへぺろしてきた。可愛い…

いかんいかん。


「何で届けられるんだよ。学校には行かなかったのか?」

「その時は学校休みだったの!!おにーちゃん、そこは重要じゃないでしょ!!」


確かにそのとおりである。学校がどうとかは過ぎたことだ。今更気にしてもしょうがない。


「愛華ちゃんに『生徒以外はいっちゃダメよ。』って言われて、秋ちゃんにお弁当を渡してもらう約束したの。そんで帰ろうとしたら次は『お茶でもどう?お菓子とかいっぱいあるから来ない?』って言われたから食べに行ったんだけど。その時に薬盛られてたみたいで眠っちゃってたんだよね~。」


この妹は~~~。はぁ、お前には警戒心というものがないのか。

お兄ちゃん心配だよ。


「それで起きたらもう注射打たれてたみたいなんだよね。」


俺は南さんの方を見た。

すると、驚くことに笑っているではないか。

あの人自分が何したのかわかっていないのか?生徒以外の人にしちゃダメだろ。

いや、生徒にもだめだと思うけど。


「結局、適合者だったんだし、死んでないからもういいよね、おにーちゃん!それにおにーちゃんが死んでなくてよかったよ。ずっと心配してたんだから~。」


抱きついてきたので、俺は頭を撫でてやった。本当に心配してくれたのだろう。足の力が抜けているようだ。

満足そうな顔をしているので少し長めに続けてやった。


「そうよ、智尋くん。私も心配したんだから。」


秋姉は俺の頭を撫でてくれた。

なんだこれ、妹の頭撫でて、しかも姉に頭撫でてもらえるなんて最高すぎだろ。

俺はしばらくこの状況を楽しんだのであった。

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