第26話 むずれ

義父は根っからの山形人で、山形弁の達人にして職人である。

用事があるから送ってくれと言われ、義父を車に乗せ出かけた。

旧友の家に行きたいらしいのだが、町並みがすっかり変わってしまい、なかなか見つけられない。


やっと思い出したらしく、交差点の直前で「ほっちゃ むずれ!」と言われた。

「むずれ!?」なんと心地よい響きか...

山形弁の真骨頂とも思える「むずれ」。

「曲がれ」の意味だが、これだけでは右か左か分からない。


「どっちゃ 曲がるんだっす?」

「ほっちゃって ゆたべ!」

「ほっちゃと言っても 右か左か分からないべした」

「ほっちゃと ゆたら 右にきまてっべ」

「......」

「ほっちゃ」が右なら「こっちゃ」は左の意味か....

山形弁はげに意味深いものである。

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