嘘の理由③




友作視点



空美に告白を断られた約一週間後の月曜日。 クリスマスは刻々と近付くが、友作にとって空美以外との時間は考えられなかった。 つまり現状ではお一人様ということになる。 

もちろん友人はいるが別の予定を入れる気にはなれない。


「帰りのホームルームを始めるよー」


空虚な日常を過ごし、担任の声によりホームルームが始まる。 窓際の席にいる友作はぼんやりと視線を彷徨わせる。


―――・・・空美さん、ここ一週間ずっと学校を休んでいるんだよな。


目が留まるのは空美の席でポツンと一つだけ空いている。


―――本当にただの風邪か?

―――一週間も長引く風邪ってあるんだろうか。


思い出すのは一週間前の出来事、振られたのは友作のため寧ろ学校を休みたいのは自分だ。


―――・・・俺のせいだったりしないよな。

―――俺が空美さんに告白をした次の日から、空美さんは学校を休んでいるんだから。


しかし実際に休んでいるのは空美のため、自分からの告白が余程嫌だったのかと思う。 もう話しかけないでとも言われている。


―――あんなに泣いていたんだ。


泣いていた顔を思い出す度に負の感情が色々と湧いてくる。


―――どうしよう、謝った方がいいのか?

―――でも俺の気持ちは嘘じゃないし、それをなかったことにするなんて・・・。


葛藤していると担任が教卓の前で言った。


「空美さんは今日も休みなんだけど、冬休みのプリントは大切だから届けたいの。 誰かお願いできないかな?」


その言葉に友作は咄嗟に手を挙げた。 現在の素行が悪いわけではないが、やはり印象のよくない友作の行動に先生は不思議そうだった。


「友作くん?」

「俺が届けにいきます!」


―――もし告白をして、空美さんを傷付けてしまったのなら謝ろう。

―――それか本当に風邪なら、できる限りのことをしてあげよう。


そう思っていた。


「ありがとう。 じゃあ友作くんに任せようかな」


担任からプリントを渡され帰りのホームルームが終わると早速空美の家へと向かった。 家の場所は分からなかったが既に先生から聞いている。


『リーダー。 早く心を入れ替えてくださいよー』


そして未だに後輩からの連絡も絶えなかった。


『俺がいなくてもやっていけるだろ』

『でもリーダーがいないと締まらないじゃないですか! 喧嘩も俺たちの中で一番強いですし』


―――・・・本当、懲りない奴だな。


確かに一番仲のいい後輩だったこともありヤンキーを止めるのは少し寂しかった。 だが恋愛の方が勝るのだ。


「・・・お、ここか?」


先生に言われた場所までやってきた。 綺麗な一軒家だった。 表札を見て苗字を確認する。


―――空美さんのお母さんとは初対面なんだよな。

―――・・・緊張する。


深呼吸してチャイムを鳴らした。 するとしばらくして女性が出てきたのだが、とても空美の母親とは思えない容姿だった。 

頭がボサボサなのはともかくとして、外国の人と見紛うレベルの金髪で肌は黒く焼けている。 耳や鼻にピアスを開け派手な色の服を着ていた。 

ただ見た感じ年齢はそこそこいっているため姉ということもなさそうだ。


「・・・どちらさん?」

「あ、空美さんと同じクラスの友作って言います。 空美さんのお母さんですか・・・?」

「そーだけど?」


母は不思議そうな顔で見つめてくる。 それに疑問を抱きつつも尋ねてみた。


「空美さんが一週間も学校を休んでいますが、容態は大丈夫ですか?」

「・・・え?」


それには分かりやすく首を傾げた。


「どうしました?」

「空美、学校へ行ってないん?」

「はい、ずっと欠席で」

「空美は彼氏の家にしばらく泊まるとか言っててー、学校もそこから通うって言っててー、青春だなぁって思っていたんだけど」

「ッ・・・!」


緊急事態だと察した。


「空美さんの彼氏さんの名前と住んでいる場所は分かりますか!?」

「何、三角関係? 面白ッ! いいよ、名前と住んでる場所を教えたげる」


名前と住所を聞き、友作は冷や汗を流していた。



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