家族ごっこ

どこの誰かも知らぬ婆ぁの世話に、泥棒はすっかり慣れて、少々楽しささえ感じてきた。


初めのうちは、いつになったらくたばるんだなどと嫌なことを考えていたが、

老婆が自分の作った汁物を決まって全て食うのを見ると、何だか気持ちがほんわかとする。


それに顔も知らぬが、自分の母親と暮らしていたら、こんな気分だろうと思うのだ。


まぁ自分の親だったらこんなしわくちゃな程の歳でもないかと思いながら、

男は好き勝手ぺちゃくちゃ今日あった事や、ここへ来る途中の季節の移り替わった景色などを婆ぁに聞かせてやった。


聞いてるのか聞いていないのかわからないが、婆ぁの口角はいつも少し上がっている気がする。


体力を使うので相槌は上手く打てないのだろうがこういうのも悪くない。

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