不本意
すさまじい吐き気に耐えながら、男は老婆の体を海につっこんでジャブジャブ洗い、
水瓶の水を少し温めてぼろきれに含ませ、この糞婆ぁと思いながら体を拭いてやった。
同時にこんな状態の母親を放置した息子か娘は随分な鬼畜野郎共だと胸糞が悪くなった。
すると婆ぁが無ぇ歯でなにかふしゅるふしゅると言葉のようなもんを紡いで、一筋涙を流した。
粗方他所の男に裸にされて、婆ぁの癖に恥じらっているんだろう。
辞めろと言っているに違いない。
うるせぇ。
泣きてぇのはこっちだと自分の勝手にやっている事なのに理不尽に文句を言いながら、何とか拭き終えた。
「おら、クソ婆ぁ。死んだ旦那か誰かが迎えに来るのに最期位綺麗にしておけや。飯の借りは返したからな。」
と軽口で勝手な事を言いながら、着物を着せておしめを巻いてやった。
これでまぁまぁ死に姿も前よりはましだろう。
それにもしかしたら、家族が帰って来て、生きた婆ぁを見つけて腰を抜かすかもしれねぇと男は一人想像して噴き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます