開閉
しかし、ある日の昼下がりの事だった。
面倒をよく見てくれる太夫に懐いている禿が太夫を心配して、部屋を換気しようと窓を開けてしまったのだ。
太夫はまさかいないもんだろうとちらりと窓の外に目をやった。
「あっ・・・。」朝霧はついに窓の外にあの少年を見つけてしまったのだった。
少年も驚いたように朝霧を見た。
窓が開いていないので諦めていたが、窓の下だけは無意識に通っていたのかもれない。
少し窓から遠い所に少年がいたので、禿も太夫が見ているものが何なのかわからないらしく、
不思議そうな顔をして外を伺っていたが、やがて太夫に向き直ると、
「姐様何かございんしたか?」
と可愛らしく訪ねて来た。
太夫は禿に優しく微笑むと、
「いんや、何でもありんせん。ただ夏らしく眩しくなったと驚いただけでありんす。」
そう言って窓の外を愛し気に眺める太夫に禿は余計に不思議に思った。
外には人通りが少しばかり多くなった小さな道があるだけだ。
いい男もチンドン屋なんかもいない。
きっと太夫は陽の光が好きに違いないと思って、禿はなんだか嬉しくなった。
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