魂の奇形

雨矢健太郎


わたしは人殺しです

人殺しは

人を殺すと人殺しになれます

それまでは人殺しではありません

人殺し未満です

ある瞬間を経過すると性質が変化し

それが人を殺すことです

例えばプロ野球選手などは

引退すると元プロ野球選手になりますが

人殺しはそうはなりません

永遠に人殺しのままです

人殺しを卒業することが出来ないままです

わたしはここにいます

今こうしてあなたに喋りかけているそれがわたしです

そしてわたしは人殺しです

でもわたしの心臓はいつだって森の中にいるのです

薄暗い陽の差さない森の中を

わたしの心臓はうろうろと

入って来た場所も忘れ出口を探し求め

そのうちその理由も忘れるでしょう

月灯りが別の感情を隙間に捩じ込むでしょう

わたしは時々、手紙を書くのです

向こうからの返事がやって来ないところをみると

どうやらうまくやっているようです


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