海王星



死んだ人は、行き先を選べるらしい。

太陽系の星でも、どこか別の銀河でも。

魂にも寿命はあるから、あまり遠くはおすすめしません、と誰かさんは言った。


私は海王星に行った。

着くまで結構時間がかかった。

死んでからの方が寿命を気にしている。可笑しい。笑える。


海王星に着いても、何をするでもない。

氷に突っ込むだけ。

水に沈んでいくような気分でいた。浮き上がろうとは思わない。

時々、他の人とすれ違うのが残念だった。


深くなってくると誰もいなくなった。ここまでに寿命は五十年はなくなっていそうだ。

太陽に照らされると明るくなる。通り過ぎると暗い。時々黒いものが頭上を掠める。

もっと深くなると明かりは届かない。

ただ黒い。


もう寿命は尽きてもいいのに。まだ尽きない。

底もない。

通り抜けてしまうのではと思う。

まだ深い。

ずっと黒い。


沈む。

沈む。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る