第14話 アーリア王国に向かって2
シャイタンからアーリア王国まではどうやら4日かかるらしい。
だからかなりの長旅になる。
俺は気絶したままシャイタンに連れてこられたからアーリア王国までの経路を知らなかったが、かなり過酷な道だった。
シャイタンの領土とアーリア王国の間には巨大な山脈がある。
フィーヒム山脈といって、アーリア王国でも有名な山脈だ。
刺々しい山頂がいくつも連なって、行く手を阻むようにそびえ立っている。
『あの山に立ち入ったものは二度と戻ってこられない』
という言葉があるくらい、フィーヒム山脈を登るのには過酷過ぎるところなんだ。
「今日は良い天気ね」
アンラは随分と上機嫌だ。
腕を上に上げて手を組み、背伸びをした。
アンラの言う通り、本当にいい天気だ。
この後戦いがあるというのに、そんな雰囲気すら感じさせないような、雲ひとつない快晴だ。
「アンラは疲れてないのか?」
「疲れてないよ。まさかルーカスは疲れてるとか……」
「まさか、俺はまだ歩けるぞ」
「ふふ……なら心配しなくても大丈夫そうね」
といっても進軍してから半日くらい休憩なしだ。
周りは防具をつけていたりしているから疲れが見え始めている。
アンラはさっきから色んな所を見ているから恐らく休憩場所を探しているんだと思う。
「うーん……あっ、いい場所あった。みなさーん! 右の方に休憩場所になりそうなところがあるのでそこで休みましょう!」
休憩出来そうな場所なんてあるか?
全然見えないんだけど……。
しばらく進むと広くて大勢いても問題なさそうな、開けたところに出てきた。
「もしかしてこの場所をあの距離で見えていたのか!?」
「もちろん! わたし凄く目がいいんだから!」
目がいいとかのレベルじゃないぞ……。
でもアンラは魔王だし……。
そういうのも普通だったりするのかな?
「ねぇルーカス」
「ん?」
アンラは何故か顔を真っ赤にしてモジモジし始める。
「その……あの奥に湖があるみたいだから……一緒に水浴びしない?」
「喜んで!」
即答だった。
だってアンラが水浴びしてるところ普通に見たいんだもん!
「――――ルーカスって結構エッチだよね」
「うーん……そうかもしれない」
「―――――っ!」
アンラは顔をさらに赤くして、自分の肩を抱きながら後ずさりした。
「いや、言っとくけど俺だってそこら辺にいる男と変わらないからな?」
「そ、そうだよね! ルーカスも普通の男の子だもんね! じゃあ早く湖行こう!」
ものすごい早口で喋った後、アンラは早足で湖の方へ行ってしまった。
アンラにさらっと凄いこと言ってしまったな……。
でもまぁ事実だし良いか。
とりあえずアンラのところに行くか。
◇◇◇
「―――――あぁぁぁぁぁぁ!」
つい思わず叫んでしまう。
なんで、なんであんなこと言ってしまったの!?
最近わたしに構ってくれないからって、いきなり水浴び一緒にしてきましょってわたしは馬鹿なの!?
しかもルーカスはわたしの質問に対して即答で「喜んで!」って……。
ルーカスの意外な性格を知ることは出来たけど……。
―――――もしルーカスがわたしじゃなくて違う人のことが好きになっちゃったら……。
「さ、さすがにないよね!」
そう言い聞かせていたけど、頭の片隅にはまだ不安が残っていた。
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