第10話 スケジュール

 2人きりの夜を楽しんだ次の日。

今は会議場にいる。

新たな七帝が揃ったアーリア王国に対抗するために、作戦を練っている所だ。

 俺は元聖帝なので、どんな技を使ってくるのか、どんな癖があるのかを、それぞれ1人ずつ細かく説明していった。


「――――とまあ、こんな感じだ」


「どれも厄介ね」


 アンラを含め、他のみんなも顔をしかめている。

七帝なんてそんなものだ。

国を防衛する中で最高峰の組織なんだから。


「あくまで俺の予想だけど、この国を攻めるとき、七帝全員が一気に攻めることはまず有り得ない。

七帝の中で一番弱い剣帝とか土帝が最初に現れると思うんだよな……ん?」


 俺の隣に座っているアンラが服の袖をクイクイと引っ張る。


「さすがルーカス! 頭いい!」


「そ、そうか?」


((((ちっ))))


 いま周りから恨みの音が聞こえたような?

まあ気のせいだろう。


「でもルーカスは復讐、したいんでしょ?」


「まぁ、そうだな」


「それならこっちから攻めちゃう?」


「は?」


 この子は何を言ってるんだ?

こっちから攻めたとしたら、あまりにリスクが高すぎる。

 相手はあの七帝だぞ?


「ルーカスならアーリア王国のことは大体把握してるんでしょ?」


「あぁ」


「それならこっちも有利ね。もしかしたら弱点があるかもしれない」


 なるほど、アンラが言いたいのは防衛が薄い所か。

アーリア王国は随一の軍事力をもつ王国だが弱点がある。

 裏口が存在するのだ。


「――――確かにアンラの言う通り、弱点はある。城には七帝の行動が極力バレないよう、七帝専用の裏口は存在する。

でもやはりリスクが高い。

王国から正面突破して行くしか方法がないし、裏口に入ったところでギミックがある」


 やはりダメなのか。

恐らく周りの者たちも、勿論自分もそう思っていた。

 復讐はしたい。

ただそれは自分の命を落とす恐れもある。

もしかしたらアンラも……。

先を考えたら身体が萎縮してしまう。

 するとアンラは俺の手を取った。


「大丈夫よルーカス。

わたしはルーカスの傍にいるからね。

勿論戦う時も!」


 その目は本気だった。

あぁ、俺はアンラに助けられてばかりだな。

俺のわがままもちゃんと聞いてくれる。

 俺はどうなんだ?

男としてこんなことされてばかりではだめだ。


「決めた」


 それはガタッと立ち上がった。

みんなは俺に視線が集まる。


「俺はアンラの案を賛成する」


 どよめきが起こった。

それもそうだろうな。リスクが高いからな。

それでも俺は曲げない。


「俺はアーリア王国から追放されて、ずっと恨んでいた。異界人じゃないからという理由だけで追い出されたんだ。

確かに異界人は、七帝は強い。今の聖帝だって俺よりずっと強い。

今はこの国を滅ぼすため、さらに鍛錬し、前より強くなっているだろう。

でも、俺は立ち向かう。

この世界の出身でも、異界人に対抗出来ることが出来ると証明するために!」


 みんな呆気に取られて口を開いていた。

だが1人が拍手をすると、みんなはつられるように盛大な拍手を送った。

 隣にいるアンラを見ると、にっこりと笑い、そして小さな声で、


「やったね」


 そう言ってくれた。

可愛いやつだ。

俺はアンラの頭を撫でてやった。

 俺が頭から手を離すと同時に、アンラは立ち上がった。


「では、これで決まりね。出発は3日後」


「えっ!? 早過ぎないか?」


「こういうのは早くやっておいた方がいいわよ。それに―――」


 アンラは視線を移した。

それに習って俺も視線を移すと、やる気満々になって闘争心を燃やしている目をしている者が。


「そうだな。アンラの言う通りだ」


 ここから俺の、そしてシャイタンの反撃が始まる。

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