第3話 聖帝の決意
はぁ……。
魔王って何かもっと迫力あって怖いイメージがあったんだけどな。
いまこの状況を見せられたら、それが全部ぶっ壊れた。
まぁ、見た目は俺と同い年18歳くらいだから……って、今そんなこと考える状況じゃない!
……待てよ?
「あの、ひとつお聞きしても宜しいですか?」
「えぇ、いくつでもどうぞ!」
「魔王様は―――」
「あ、私のことは名前で呼んでくれて構いません。
そういえば自己紹介はまだでしたね。
わたしの名前はアンラ・スルターンと申します。アンラとお呼びください。
様とか付けなくても良いです!
あと、敬語とか良いですよ!」
「えっと、じゃあ俺のこともルーカスと普通に呼んでくれて構わないから……
俺も敬語じゃなくていいから」
何故かアンラはガッツポーズしているんだが、まあ気にしないでおこう。
「えー、話を戻すか。
あくまで噂だけど、魔王は全属性魔法を放つことが出来ると聞いたことがあるんだが、それは本当のことか?」
「それは先代、つまりわたしの父上がそうだったわ。
わたしは全属性魔法を一応扱えるけど、父上ほどではないわね。
ただ、わたしは闇魔法を得意としているよ」
さすが魔王と言ったところだ。
しかし、アンラの親父さんは凄かったんだな。
全属性魔法を操ることが出来たとか、まさに
一回会ってみたい気もする。
それにしても、闇魔法か……。
闇属性は光属性の真逆の存在。
俺のような光属性を持つ者が闇属性をくらえば、大ダメージを浴びせられる。
逆に闇属性の者が光属性魔法をくらえば、大ダメージを浴びせられる。
つまり、この2つの属性は弱点同士なのだ。
光と闇が6属性に入らない理由は、まさにこれだ。
俺の目標はアーリア王国を滅ぼすこと。
しかし、七帝には俺と同じ光属性を持つ、2代目「聖帝」がいる。
だが、俺の目の前には闇魔法を操ることが出来る魔王、アンラがいる。
もう俺がする事は決まっている。
「アンラ、どうかこの俺に闇魔法を教えて欲しい」
「えっ!?な、なんで?」
「少し長くなるんだが―――」
そして俺はアンラに今までの経緯を話す。
俺がアーリア王国を滅ぼすことを目標としている事も。
「なるほど、そんなことがあったなんて…。
確かに、あの国のいい評判は聞かないわね。
特に、あなたのあとを継いだ新しい聖帝が厄介ね……」
「そのために闇属性魔法を習得したいんだ」
「―――わかったわ。
わたしが出来るものは全てルーカスに教える」
「ありがとう、アンラ」
「でもその代わり……」
アンラは顔を紅くして、モジモジしながら俺に言った。
「わたしのそばに居てね……?」
「わかった。約束しよう」
「やったー!ありがとルーカス!」
「うぉっ!」
アンラが俺に抱きついてきた。
正直そんなことされたら色んな所が当たって……あ、柔らかい。胸は大きくないけど―――ってそうじゃない!
理性崩壊しそう!
そして、そんなに顔を近づけないでください!
あなたのめちゃくちゃ可愛い顔のせいで、理性を保つことで精一杯だから!
「うふふ、ルーカスも顔赤くなってるよ」
「し、仕方ないだろ!
急に抱きついてくるもんだから……」
「じゃあ……」
アンラは俺の顔に近づくと、
「わたし……ルーカスのこと好きだから」
「っっっ!?」
俺の耳元でそう囁いた。
てか、出会ってそんなに時間経ってないよね!?
なのに、こんな甘い展開なんてあるか!?
耳元で囁いて告白なんて本当に反則だと思う。
だって、こんなに可愛い女子が甘ったるい声で、しかも耳元で言われるなんて……。
俺……明日死ぬのかな?
「ルーカス?あれ?おーい」
俺は結局硬直してしまったのだった。
さすが魔王だな……。
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