この世界のアラクネは密林の覇者。ロボを従え覇道を生きる
京衛武百十
ヒト蜘蛛(アラクネ)
それは、巨大な<クモ>を思わせる獣だった。全長約三メートル。頭頂高約二メートル半という巨体だけでも十分に異様だったが、それ以上に、見る者を驚愕させる特徴を、その獣は有していた。
何しろ、クモを思わせる胴体に、人間そっくりの体が付いているのだ。
いや、『そっくり』どころかほぼほぼ人間そのままと言っていい。腕も脚も揃っているし、それどころか、いわゆる<外性器>さえ再現されているのである。
しかし、それは決して<人間>ではなかった。人間としての知能も感性も一切備えていなかった。ただただ残忍で冷酷で、殺戮に対して一切の躊躇も持たない。たとえ相手が<同種>であっても。
なにしろそいつは、<共食い>をするのだ。縄張りを持ち、繁殖以外では一切、余所者が縄張りに入ることを許さない。相手が逃げなければ、殺すまで攻撃をやめない。そして相手が死ねば、容赦なく食う。
巨体を維持するためにはとにかく大量に食わなければならないからだ。
なお、<クモ>を思わせる外見はしているが、実は、頭部・胸部・胴部の三つの部位に分かれており、かつ、脚は胸部から三対六本が生えているので、実際には昆虫の特徴を有している。
が、厳密には昆虫でないことは明らかである。
何しろ昆虫は、これほどまでの大きな体を持つことができないがゆえに。そいつは、昆虫の特徴を持ちながらも脊椎動物の構造も兼ね備え、巨体を内骨格で支え、外骨格はある意味<装甲>としての役割を持っているのだろう。
また、人間そっくりに見える部分は<頭部>であり、人間の手足に見えるものは、いわば<触覚>だった。
脳は、人間そっくりに見える部分の頭部にあり、餌を食うのも人間そっくりに見える部分の口で行うが、基本的にはそれだけである。人間そっくりに見える部分には<人間としての機能>は備わっておらず、あくまでこの獣の<頭部>であり一部分でしかないのだ。
しかも、その人間そっくりに見る部分の<性別>は、本体の性別とは必ずしも一致しないという特徴も持つ。
これらのことから、そいつは、<
そしてこれは、
<
という固有名詞を付けられた<彼>の物語である。
もっとも、彼の人間そっくりの部分は、<妙齢の美女>にしか見えないので、
いずれにせよ、<
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