27話
次の日の朝(私が気絶したのが十二時過ぎてたから次の日とは言えないかもだけど)、体力を使い果たされた私が起きれるはずもなく、真夜が朝食を作ってから起こしてくれた。
正直どんな工夫をしても食べ飽き始めていた肉も、真夜が調理したっていう事実があれば美味しく感じられた。
探索は前とは反対の方向に、スライムとかトレントといった、前みたいなことが起きないように最初から飛んで行くことにした。前回は私の自律心(笑)のおかげでなんとか途中までで済んだけど、今はあんなことが起きても何も我慢する必要ないから危険だ。
しばらく採取しながら飛び続けていると、段々と木が低くなっているのが分かった。
ここまで来れば前みたいな魔物も奇襲はできないだろうと思い、だけど周囲への警戒は十分にしながら歩いての探索を始める。
探索しながら色々試してみてわかったことがある。それは、ここら辺の木は私たちの家があるところの木ほど頑丈ではなくて、魔物は少ない。
さらに少し歩いていると、四つの生命反応を感じ取れた。
三つは狼で一つは……人?
人は全然動いている気配がない。心配になって急いで近づいてみると、髪は金色だけど土で薄汚れて、倒れている傷だらけの少女が狼に囲まれていた。少女が身に纏っているのはドレスで、引き裂かれて所々破れているけど、上質そうなのがわかる。
やっぱり狼が人を襲っているのかな?少女は気絶しているようだ。
私と真夜が近づくと、狼はすぐどこかに逃げていった。私は急いで少女に回復の魔法を使う。
白色の光が少女を包み込み、見る見るうちに傷を癒していった。
……このままにしていても、また襲われるのが目に見えている。というか、この少女が一人で家まで帰れるかもわからない。
「お姉ちゃん、この子起きるまで私たちの家で保護する?」
「そうしよっか」
真夜が少女を持ち上げようとした瞬間、少女が上半身を起こした。そして周りを見渡して
「…あれ?ここはいったい……私は確か……っ!?」
何かを思い出したらしく、少女は顔を真っ青に染めた。
しばらく狼狽えていたけど、私たちの姿が目に入ったのか、コホンッと可愛らしい咳をしてから頭を下げた。
「命を救ってくださり、ありがとうございます。これをサウセント王国の国王に見せると、お礼を受け取れると思います」
そう言って渡してきたのは、豪華な装飾が施された紋章だった。もしかしてそれなりに偉い地位の子かな?
真夜が少女に話しかける。
「あなたはこれからどうするの?」
「え?王国に帰りますが」
「ここから王国に一人で帰れるの?」
「えっと、それは……」
「帰れないって分かってるからこの紋章を渡したんでしょ?お姉ちゃん、いい?」
「勿論いいよ!」
私が許可を出すと、真夜が少女を持ち上げて飛ぶ。私もそれに合わせて飛ぶ。
「え?え?!」
少女は突然のことに困惑してるようだった。
……許可は出したけど、真夜が私じゃない人を抱きかかえているのを見ると胸がモヤモヤしてくる。もしかしてこれが嫉妬?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます