3話

 段々とお日様を浴びた芝生の草木を感じながら意識がハッキリとしていく。だけど起きる気にもなれず、二度寝をしようとしたところで、視線を感じた。


「うん…………?」


 眼を擦りながら体を起こし、視線を感じた方を見る。目の前には、同じ方向を向いて寝ている真夜がいて、遠くには白い毛並みの大きな犬が二匹、その子供らしき子犬が三匹歩いているのがわかった。


 こっちを見てたのはあの犬たちかな?


 犬たちはどこかに移動するようなので、私は安全だと思い今度こそ二度寝を……。


 草木…?野犬…?何で私外で……


「あっ!!」


 大事なことを思い出して思わず声が漏れる。その声に反応するように真夜がビクッとと体を震えさせた。


「う、うん……?どうしたのお姉ちゃん?」


 寝起きの感じがわざとらしい気がするけど、それよりも、


「真夜!起きて!!今私たち異世界にいるよ!!」


 辺りを見回すと、見たこともない草木や木の実が沢山あった。


「……すごい」


 真夜がその景色に見惚れている。この辺りには、この世界の住人からは強いと感じる魔物がいるから先ずは安全を確保しないと。


 私は見えていた犬…いや、オオカミ?家族に向かって歩き出す。お姉ちゃんの言うことを疑うわけじゃないけど、万が一のことがあるかもしれないから


 少し近づいただけでオオカミたちは私が近づいていることに気付いたらしく、一斉に止まってこちらを向いた。

 そしてペコリと頭を下げて再び歩き出した。


 魔物は本当に神を襲わないらしい。


 多少の安全の確認を終えたあとにすることは、自分の能力確認だろう。

 ある程度の自分の能力は字面では把握しているけど、実際に試さないと。


 まず、技神としての能力は、色々な物の作り方、加工の仕方が手にとるようにわかり、ほとんど何でも作れるらしい。


 そして神としての能力は魔法。

 神の体内にだけある、神力を使って自然現象などを生み出せる力。どれほど神力を使用しても一秒後には完全回復するほど回復速度は早いらしい。


 最初は感覚を慣らすために、右手の親指に炎の塊、人差し指に水の塊、中指に風の塊、薬指に土の塊を生み出し、それを隣の指に移す動作を繰り返す。

 真夜も私の真似をしてし始める。


 次に、炎と風、水と土を融合させ、熱風の塊と泥の塊を作る

 最後にそれを消そうと強く考えればそれは神力となって体内に戻ってきた。


「おおっ!!」


 これは楽しい!前の世界だと絶対に使えなかった魔法が使えるだけでも気分がいいのに、それが使いたい放題、思うがままだと気分の高まりを抑えられなくなる。


 炎の竜巻を生み出そうとして、真夜が止めてくれてなんとか気分を落ち着かせることができた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る