第33話 まかせなさい! 『とっておき』を見せてアゲル!

 僕らは走った!


 ただひたすらに!


『PU、PUUUUUUUUUUUUUUUUUUDDDDDDDDDIIIIINNG~~』


 ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ!!


 〈グラトニー・プリン〉は岩石をすべて飲みこんで追いかけてくる!


「ハァ! ど、どうしてこんなことに! 」


「ハァ! ハァ! あ、あいつ意外と早いよ! このままだと追いつかれちゃう!」


「……ハァ! ハァ! ムダ口たたいてないで、と、とにかく走るのですわよ!」


「クーン! クーン!」


 そうだよね! キキの言う通り!


 今はみんなのもとに行かなきゃ!


 大きいとは聞いていたけど。


 まさかテーブル台地、『メサ』 ぐらいの大きさがあるなんて。


 たぶん今まで見つからなかったのは、多分ギタイしていたからだと思う。


「みなさん! あそこ!」


 やったぁ! テントが見えてきた。


 これで――。


「リリー姉ぇぇぇ! レヴィン兄ぃぃ!」


「あ、ようやく帰ってきた。もうランチでき……て……え?」


 わぉ!


 すごい青い顔!


 あんな顔、リリー姉さんもするんだね!


「て、テメェら! なにいきなり連れてきてんだっ!」


 アニキの言うことはごもっとも!


「見つかっちゃんだからしょうがないじゃん!」


「と、とにかく! やりますわよ! リュシアン! アリサ! 準備なさい!」


「わ、わかったよ! 姉さん」


「かしこまりました」


 すぐに応戦を開始!


 6人でけん制しながら、リリー姉さんの術で一気にダメージをあたえる。


 そういう手はずだったんだ。


 BANG! BANG! BANG!


 KABOOOOOOOOON!!


「今度こそ! あ……」


 KUNRRRRRRRRRRRRRRRR!


「だめだよ! フィル! すぐにふさがっちゃう!」


「く、これもダメ! くそ、どうしたらダメージをあたえられるんだ!」


 どんな精霊の力をもってしてもすぐに再生してしまう。


 火、風、水、土――全部ためした。


 いったいどうすれば――。


「全員どけ! リリーの術がくるぞ!」


『空は彼女の舞台! 鳴き、わめき、うなりながらやって来る! 竜巻の精霊女フウピリクゥ!』


 GWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOーーーーーー!!!


 TSCHUMM!! ZOSCHH!! TSCHUMM!! TSCHUMM!! HIUUUーーー!!!


 二本の竜巻が〈グラトニー・プリン〉をゴリゴリと削る!


『PU! PUUUUUUUUUUUUUUUUUUDDDDDDDDDIIIIINNG!!』


「そ、そんなっ! ぐっ……ハァ……ハァ……」


 そう、削るだけで終わってしまう。


 マズイ、リリー姉さんも息が上がってきた。


 二度、三度、こんな調子で、いつまでもつか。


「これじゃラチがあきませんわね! 仕方がありませんわ!」


 いきなりなんだ!?


「特別にわたくしの【才花アクシア】を見せて差し上げます! アリサ! サポートたのみましたよ」


「承知しました!」


「いったい何を!?」


「指の間からのぞいていったい何をしているの!? 左目が白く――あっ! あぶない」


『PU! PUUUUUUUUUUUUUUUUUUDDDDDDDDDIIIIINNG!!』


 無防備になったところへ〈グラトニー・プリン〉の消化液が!


「お嬢様っ! ぐ――っ!」


「アリサさん!!」


 寸でのところでアリサさんがかばいに入って、ジェニファーさんはなんとか無事。


 でも消化液のせいで、服がズタボロ!


 みみみ、みる、みるカゲも――。


「見るなぁ!!」


 DONK!


「ぐふっ! ウィ、ウィン! い、いきなり、なにすんの!?」


「なに? まだオシオキがほしいの!?」


 ウィンの久しぶりのグーパンを食らった。


 ってそんなことしている場合じゃない!


「姉さんの【才花】は〈鑑定アプレイズ〉なんです」


 BANG! BANG!


 リュシアンくんの話では、あの白い左目で、弱点などをみやぶることができるらしい!


「あれはもともとは盗品かどうかを見やぶる〈故買フェンシング〉の【烙印スティグマ】持ちだったものが変化したんです」


「でも、なんでアリサさんがかばって!?」


「アリサの【才花】は〈守護ガード〉、服はキズついても、その身には一切キズつかない。だから心配いりません」


「リュシアンくん! 鼻血! 鼻血!」


「おっと、これは見苦しいものを――」


 見苦しいと思うなら、そのスケベ心をなんとかしようか。


 そういえばうちにもスケベ大王がいたな。


 なっ!?  僕じゃないよ!?


「なに! ぼさっとしてやがる! オレたちでやつをひきつけんだろ!」


「あ、うん! そうだね!」


 あれ? 意外。


 てっきり鼻の下のばしてるかと――思ったら。


「レヴィン兄ぃ後でオシオキだからね!」


 しっかりのばしていました!


 説得力ない!


 ん、ちょっとまて。


「ねぇ!? さっき『も』って言った!? ウィン!? ねぇ!?」


 BANG! BANG! BANG!


 KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!


 絶えまなく引き金を引き続け、とにかく時間をかせぐ!


「見えましたわ! こいつは【火】、【水】、【風】、【土】どの属性も、ほぼ無効にしますわ! だからそれ以外の属性で!」


「そ、そんな! だってリリー姉ぇは!?」


「そうだ! リリーはそれ以外の精霊と対話したことがねぇ!」


 なんだって!?


 それじゃぁ、まさか――たおせない!?


 だとしたら、ここはやっぱり


「どうする!? 一度にげて体制を立て直す!?」


「それしかありませんわね。援護えんごしますわ」


「待ってっ!!」


 びっくりしたぁ。


 いつになくリリーさんが大声を張り上げて、みんな視線が集まる。


「――やってみるわ」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回! 「オチはやっぱり『コレ』だよね? プリン系モンスターの約束ごと!」

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